2020.05.25

ディノス・セシール、ダイナミックプライシングで「衣服ロス」削減 ブレインパッドとアルゴリズム開発

ディノス・セシールは5月21日、ブレインパッドと共同で通販ブランド「セシール」のオンラインショップにおいてダイナミックプライシングを導入し、アパレル業界の深刻な課題となっている「衣服ロス」の解消を目指す。ブレインパッドが開発した販売価格を算出する数理最適化アルゴリズムを用いることで一定の効果創出が見込めることが確認できたという。今後は実用化に向けてさらに取り組みを進めていく。

ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスなどを分析し、商品やサービスの価格を変動させることで収益の最大化を実現する技術。現在、日本ではホテル業界や航空業界などが需給に合わせて価格を変えるダイナミックプライシングを導入している。

アパレル業界においては、トレンドを取り入れた商品を企画・販売し、そのシーズン内にできるだけ多くの商品を売り切りたいとの考えが一般的であり、時期を見計らって値引きなどを実施していた。「セシール」はこれまで、熟練した担当者のノウハウに基づき、値引きのタイミングや値引き率などを設定していたが、適切に需要を捉えきれずに在庫が残ってしまうケースもあった。この課題解決の手段としてダイナミックプライシングに注目したという。

商品の独自性が強く、トレンドの加味も必要なアパレル業界においては既存のツールでは難しいと考え、ブレインパッドと供に自社サイトやアパレル業界特有の制約条件を加味した独自モデルの構築を進めていた。

ブレインパッドはダイナミックプライシングの実現に向け、必要なデータを準備するところから着手。「セシール」として整備していなかったデータは、自社開発の「Rtoaster(アールトースター)」や「Google Analytics」を用いて収集した過去の購買履歴データを元に、データを補完・推計し、独自モデルの構築に生かしたという。

その結果、商品ページへの訪問者数を予測するモデル、商品ページ訪問者の購買確率を予測するモデルの2つの予測モデルの構築と、この2つのモデルと在庫数を用いて最適な販売価格を求める数理最適化アルゴリズムを開発。一定の効果が見込めることを確認した。今後「セシール」とブレインパッドは、この2つのモデルと数理最適化アルゴリズムを元に実地検証を行い、モデルの改善・多機能化、システム化を進め、実用化に向けた取り組みを段階的に進めていく考えだ。

今回開発したアルゴリズムは、さまざまなECサイトに適用可能な拡張性・汎用性を考慮して構築したという。ブレインパッドは、ECサイトや実店舗での価格最適化に加えて在庫最適化の支援を検討するとともに、「Rtoaster」などのデジタルマーケティングツールとの連携も視野に、アパレル業界をはじめとする小売・流通業界のデジタル変革を推進するソリューションとして強化していく。

ディノス・セシールのセシールマーケティング部、藤田満氏は、「今回の取り組みは収益向上という観点だけでなく、お客さまをはじめ仕入先・生産者といったさまざまなステークホルダーにとって望ましいものにしたいという思いがありました。そのため在庫低減だけを目標とするのではなく、より上流の原材料調達や生産量の最適化に繋げること、社会課題である衣服ロスへいかに貢献できるかが重要であると考えました」とコメントしている。

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