2023.05.25

【一元管理「楽々通販2」急停止で混乱】導入企業は膨大な注文を手動処理 顧客データ消失も

「楽々通販2」のサービスサイトは閲覧できるが、イメージデザインのホームページは閉鎖されている(5月22日時点)

一元管理システムが急にログインできなくなった――EC企業やECコンサルタントから、そんな耳を疑うような話を聞いた。事前の通告なく、今年4月末にサービスが急停止したようだ。
 
ある導入企業は、「サービスが使えなくなったのは4月28日のことだった。突然ログインできなくなり、運営企業に問い合わせても連絡が付かなかった」と言う。


アワード常連も導入


「楽々通販2」を運営するのはイメージデザインという京都の会社だ。2021年7月に実施した一元管理システム特集のアンケートでは、「楽々通販2」の導入社数は200社あると回答していた。使い勝手の良いUI(ユーザーインタ―フェイス)や、カスタマイズにも対応するシステムの柔軟性が好評で、導入企業を伸ばしている様子だった。

「楽天市場」のアワードの常連店舗も、サイトに掲載された導入実績に名を連ねている。

弊紙でもイメージデザインに何度か電話してみたが、つながらなかった。


急停止に現場は混乱


一元管理システム「通販する蔵」を運営するソフテルのもとには、「楽々通販2」の導入企業から、急なシステム移行の依頼が来ているという。

「導入していた店舗さんの窮状を救うために、通常ではありえないが、2日で2社『通販する蔵』を稼働させ、とりあえず出荷処理ができるようにした。それでも停止中に注文処理できていないデータが膨大にあり、導入店舗さんは対応に苦慮されていた」(ソフテル 北川輝信社長)と話す。
 
ある導入企業も「サービスが利用できなくなったため、手動で受注処理をせざるを得なくなり、受注スタッフの負担がとても大きくなった。別の一元管理システムを急いで導入したが、突然の移行だったので顧客データが修復できず、かなり大変だった」と話す。

一元管理システムは複数のネットショップの受注データや商品データなどをまとめて管理する仕組みで、導入企業にとってはショップ運営の核ともいえる重要なサービスだ。通常業務はモールやカートの管理画面を開かずに、一元管理システムの管理画面上のみで処理している事業者も多い。そんな一元管理システムの急停止は、導入企業にとって死活問題になりかねない。


急停止に備える策は?


ある導入企業は、「徐々に問い合わせに対しての返信が遅くなっていき、スタッフが減ってきているのではないかと感じていた」と話す。
 
EC関係者の話では、「楽々通販2」を開発したエンジニアが2年前くらいにイメージデザインを退職し、そこからシステム開発に問題が生じ始めていたという。
 
サービス停止の詳細な要因は分からないが、多くの企業が利用するシステムを提供する企業として、事前案内なくサービスを急停止したことは、悪質といわれても仕方がないだろう。
 
今後、他の一元管理システムでもこのような事態が生じる可能性はゼロとはいえない。
 
急停止への対策として、定期的に顧客データのバックアップを取っておくなどの方法はあるが、そのコストやデータの保存方法、情報漏えいの回避など課題は多い。
 
システム会社の企業の体制を把握したり、信用調査を行ったりするなど、サービスを急停止しない経営状況かを調べておくのも一つの手だ。表向きのサービス内容だけではなく、運営会社を信頼できるかどうかもサービス選定で重要になるだろう。






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