2023.03.21

商標権について、デジタルプラットフォームの利用において注意すべき点、デジタルプラットフォーム取引相談窓口(オンラインモール利用事業者向け)


デジタルプラットフォーム取引相談窓口(オンラインモール利用事業者向け)は2月10日、「透明化法の運用状況と出店者が気を付けたい法律知識(商標権)について」のセミナーを実施した。セミナーの第2部では内田・鮫島法律事務所の稲垣紀穂弁護士が、商標権の基礎について説明するとともに、模倣品販売や転売の事例、並行輸入の事例などといったケーススタディを解説した。



商標権の基礎


■商標・商標権とは

稲垣弁護士はまず商標・商標権について説明した。商標というのは「マークとそれをどんな商品・サービスに使うのかという2つの要素で構成される」と解説した。

まず商標の具体的な種類と名称を述べたとともに、商標の機能について説明した。その上で「商標の価値、商標の機能を守るために商標権の制度が存在する」と語った。

■商標権の効力

続いて商標権の効力について説明した。商標権の効力には、専用権としての側面と禁止権としての側面がある。専用権としての側面は、商標権を取得すれば、自分の商標として使い続けることができるというもので、禁止権としての側面は、自分の登録商標もしくは、それと似たような商標を使っている人に「使うな」ということができるというものである。

商標権侵害成立の一般的な要件は、正当な理由なく、①商標を「使用」していること②使用している商標が「登録商標と同一または類似」していること③商標を「指定商品・役務と同一または類似の商品・役務に」使用していることであると説明した。

オンラインモールへの出品に当たり、特に問題となりやすいのは商標法2条3項の2号と8号の「使用」であると注意を促すとともに、侵害品を他人から譲り受けて転売する場合にも、商標権侵害は成立し得るとした。

■商標権の取得と調査

商標権を取得するには、特許庁に出願し、審査を経て登録されることが必要となる。登録商標の調べ方は、特許庁が公開しているデータベースがあって、それを使えば誰でも簡単に検索できるという。

 

ケーススタディ

■模倣品販売の事例

稲垣弁護士は次に、具体的なケーススタディを行った。まず模倣品販売の事例として、あるブランドの指定商品をバッグとする商標登録がされたロゴマークを、そのブランドのものでないバッグに付してオンラインモール上に掲載、販売した、という事例を示した。この場合、商標権の侵害が成立する。

■転売の事例

次に転売の事例として、ある事業者が他の国内業者から、あるブランドの、指定商品をバッグとする商標登録がされたロゴマークが付されたバッグを仕入れて、オンラインモール上に掲載、販売していたところ、オンラインモールから当該バッグが侵害品(そのブランドのものではない商品・いわゆる偽物)であるとして、掲載、販売を中止するよう通知を受けた、という事例を示した。このとき、実際にバッグが侵害品だった場合は、商標権の侵害が成立する。しかし、侵害品ではなく真正品だった場合、基本的に侵害は成立しないという。

■並行輸入の事例

続いて並行輸入の事例として、国内の事業者が他の国外業者から、指定商品をバッグとする商標登録がされた海外ブランドのロゴマークが付されたバッグを並行輸入し、オンラインモール上に掲載、販売していたところ、オンラインモールから当該バッグが侵害品であるとして、掲載、販売を中止するよう通知を受けた、という事例を示した。このとき、上記①~③の要件は充足するが、並行輸入については商標権侵害にならない場合を示した判例が存在し、当該判例の示す要件を充足する場合、侵害不成立となる。

ただし、転売や並行輸入の事例に関し、商品が真正品であること(並行輸入の事例では判例が示す要件を満たすこと)の証明が容易ではない場合もあり、このような場合には侵害不成立と認められるのに一定のハードルがあるという。登録商標の付された商品を取り扱う場合、仕入元(商標権者でない場合)に対して商品が真正品であることを確認し、何らかの証拠(保証書等)を残しておくことが重要だと指摘する。

なお、侵害品の出品についてオンラインモールが責任を負う場合もあるが、出品者の責任が否定されるわけではなく、またオンラインモールの利用規約には、侵害品を出品してはならないという内容の規定があるのが通常であるため、結局出品者出店者の注意が必要であるとした。

このほか、ハッシュタグとして商標を記載した事例とメタタグとして商標を記載した事例についても触れた。


オンラインモールに商品を出品する際の注意点


最後にまとめとして、オンラインモールに商品Aを出品する際は、商品Aの商品名について、指定商品を商品Aとする商標登録がされているかを特許庁のデータベースで調べ、そして商標登録がされていた場合、仕入元(商標権者でない場合)に対し、商品Aが商標権者の商品なのかどうかを確認(必要に応じて証拠の提出も求める)し、また商品Aが輸入品であった場合は、判例が示す要件を満たすか確認する、という手順を踏むべきであると説明した。

なお、商標権についてのこれらの注意点は、オンラインモールへの出品の場合に限らず、自社サイト等で販売する場合にも気を付ける必要がある。






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