競合モールへ対抗
「送料無料施策」は、競合モールに対抗するための取り組みであることも強調する。
「米国ではファーストパーティー(直販型の)ビジネスモデルの企業がドミネーション(支配)を進めている。小売店が3年間で1万店以上閉店した」(三木谷社長)と、アマゾンが一極集中の市場を形成していると指摘した。
さらに、「NPS(サービス推奨度)はアマゾンに肉薄してきた。でもまだ負けている。負けている理由は送料だ。送料が理由で購入を諦めているユーザー7割もいる7割の方は3980円以上が送料無料になったら『楽天市場』で買ってくれる。日本の企業、日本の店舗だから(消費者も)みんな応援したいはずだ」(同)と理解を求めた。
送料が原因で購入をあきらめたユーザーが約7割もいる三木谷社長は中国の例を出し、「中国ではアリババが『タオバオ』から選別した店舗を『Tモール』に集め、統一したルールで運営している。楽天はそういうことはやりたくない」と説明。モールを二つに分ける手法はヤフーも同様であり、暗にヤフーとは異なるポリシーであることを伝えている。
「『楽天市場』は5万店が一体となり、多様性をキープしながら、安心・安全で迷わないサービスとして進化する。そうしなければ集合体のショッピングモールとしての持続的な成長はあり得ない」(同)と話した。
「送料無料」は踏み絵か
モールを分断するような取り組みはしないものの、「楽天市場」で前向きに事業を行う優良店向け施策は実施するという。
具体的な内容はまだ示していないが、①評価基準の多様化②賞・メリットの追加③ユーザー露出の強化――などを一例として挙げている。「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー」や「ランキング」などでは売り上げの大きい店舗が露出を高めやすい仕組みだが、中小規模のショップでも取り組み方によって露出を高められる制度を導入する見込みだ。
20年上期に優良店舗施策を実施今後は「送料無料施策」など、楽天が推進する「統一性」を高める取り組みへの対応状況が評価に反映されるかもしれない。楽天が決死の覚悟で臨む「送料無料施策」は、「楽天市場」とともに歩むかどうかの判断を迫る「踏み絵」とも言えそうだ。