2022.12.09

テレビ通販の電話受注でクロスセルしたら逮捕?消費者庁、特商法の政令改正案について意見募集


消費者庁は11月30日、「電話勧誘販売」に該当する要件を拡大する旨を盛り込んだ、特定商取引法の政令の改正案について、パブリックコメントを開始した。原案通りの内容で改正されると、例えば、ウェブやテレビ・ラジオ広告、新聞広告などを見て電話をかけてきた顧客に対して、クロスセルやアップセルを行う行為が「電話勧誘販売」に該当することになる。「電話勧誘販売」の場合、書面交付義務や、再勧誘の禁止規定など、「通信販売」にはない、義務・禁止行為が多数規定されている。クーリング・オフを受け付ける必要もある。違反すれば、行政処分や刑事罰の対象となる可能性がある。例えば、テレビショッピングを見て電話して来た顧客に対して、別の商品を販売するクロスセルを行い、電話勧誘販売の書面を交付しなかった場合には、「6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金(併科あり)が科せられる」ことになり、逮捕される可能性もある。業務停止命令などの行政処分の対象にもなる。見せしめの処分・逮捕などが頻発する懸念もある。


そもそも電話勧誘販売に該当するケースも


特商法では原則として、事業者が顧客に電話をかけて行う勧誘行為を、「電話勧誘販売」と規定し、「訪問販売」などと同様の厳しい規制をかけている。特商法では、事業者が電話をかけない場合でも、「事業者が欺瞞的な方法で消費者に電話をかけさせて勧誘した場合」については、「電話勧誘販売」に当たると規定していた。

この「消費者に電話をかけさせる方法」について、現行の政令では「電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、又はビラ若しくはパンフレットを配布して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること」と規定している。つまり、例えば、郵便物でAという商品について案内し、電話をかけて来た顧客に対してBという商品のクロスセルを行った場合は、これまでも「電話勧誘販売」に該当していた。

今回の政令の改正案では、「電話をかけさせる方法」の例示の中に、「広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等を利用」することを新たに追加している。つまり、新聞・雑誌広告、テレビ・ラジオ、ウェブなどを見て電話をかけて来た顧客に対して、クロスセルやアップセルを行うと、「電話勧誘販売」としての規制を受けることが明確化することになる。

行政は新たな規制を導入した場合に、一罰百戒の意味を込めて、積極的な処分を行うケースがある。健康食品や化粧品などの通販では、広告を見て申し込みの電話をかけてきた顧客に対して、別の商品のクロスセルやアップセルを行うケースが一般化しており、書面交付義務を果たさないケースなどで見せしめの処分が増えることが懸念される。

 

トラブル増加が背景に


消費者庁では、「ある商品の広告を見て電話した消費者が、別の商品を提案されてトラブルになるケースが、消費生活センターに多く寄せられていることから、電話勧誘販売の対象の拡充を、政令の改正案に盛り込むことになった」(取引対策課)と話す。

国民生活センターは11月30日、「テレビショッピングなどを見て電話で注文したら、意図せず定期購入に!?『サンプル』『おまとめコース』などを薦められても要注意!?」などとする注意喚起を行っている。具体的な相談事例として、「テレビショッピングを見て、紹介されていた商品を購入するために販売事業者に電話したところ、当該商品と一緒に別の商品を勧められた。別の商品は断り、当該商品だけを購入したはずなのに、後日、当該商品と一緒に断ったはずの商品も届き、定期購入だった」などを挙げている。こうした相談が多く寄せられているという。

別商品のクロスセルやアップセルが、電話勧誘販売に該当しても、直ちに法違反になるわけではない。ただ、前述の通り、クーリング・オフができる旨など、法定の諸事項を盛り込んだ書面の交付がなければ違法行為となる。断った顧客に対する、一定期間内の再勧誘や、勧誘を行う人の氏名等を明示せずに行う勧誘なども違反となる。

これまで行政は、通販のアップセル・クロスセルに対する、「電話勧誘販売」規制の適用を、必ずしも積極的に行ってきたわけではない。政令改正後も、どの程度厳格な運用を行うのかは未知数だ。

なお、パブリックコメントの意見募集期間は12月29日(必着)までとなっている。





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