2022.11.25

【2022年10月、東証グロース上場】キューブ 松村智明社長「独自の手法でゴルフウエアに新市場を創出」

松村智明社長


ラグジュアリーゴルフウエアブランド「MARK & LONA(マーク・アンド・ロナ)などを製造・販売するキューブは今年10月、東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。ゴルフウエアの業界にラグジュアリーでファッショナブルなアイテムを投入し、これまでにないブランドとして人気を集めている。2021年12月期の売上高は、前期比49.2%増の39億円だったが、そのうちEC売上高は23.3%を占めている。今後もブランドを成長させながら、国内外にリアルとECの両面で展開を強化する方針だ。松村智明社長に、ブランドの強みとマーケティング戦略について聞いた。



――「MARK & LONA」など貴社のブランドの特異性は?

スポーツメーカーさんが出されているゴルフウエアだと、主に機能性を重視しているアイテムが多い。「MARK & LONA」のように、ファッション性に特化したゴルフウエアは稀有な存在だ。デザイン性やグラフィック、カラーリングを追及している。


▲ファッション性の高いゴルフウエアを展開

売り場という面では当初、スポーツ用品店くらいしかゴルフウエアを扱っている店舗がなかったが、当社はそういう売り場には卸してこなかった。ルイ・ヴィトンさんやエストネーションさん、ユナイテッドアローズさん、ビームスさんなどに卸していった。

そういう売り場に展開されたというのが、高価格帯のマーケティングと合致していた。他のゴルフウエアブランドとは、スタートから違う。最初から世界に一つしかないブランドを作るのが目的だった。

――ラグジュアリーなゴルフウエアを作る難しさは?

ラグジュアリーブランドがゴルフアイテムを販売することはあるが、本格的にゴルフウエアのラインを作っていくのは簡単ではない。ラグジュアリーであるためには、高消化率・高利益率であることが求められるが、在庫のことを考えると大規模に開発していくのが難しい。

ゴルフウエアはユニフォームのような側面もあるので、ゴルファーの皆さんは帽子から靴までそろえたいと考える。ラグジュアリーブランドがフルラインアップを手掛けようとすると、1シーズンに2パターンくらいのコーディネートしか作れないのではないか。

われわれも最初は50型ぐらいからスタートした。今ではすべてのブランドを合わせると、年間1000型くらい作っている。SKU数だと、その3~4倍になる。これだけのアイテムを展開し、契約選手のサポートをしたり、専門的な素材開発を手掛けたりするのは、かなりハードルが高いと思う。

――ラグジュアリーブランドを育てることができたポイントは?

当初からゴルフウエアとしての売り方はしなかった。あくまでもファッションブランドとして展開していった。私自身が長年、ハイエンドマーケットでビジネスをしており、ファッションブランドの売り方が身に付いていた。それをゴルフに転用したわけだ。逆に言うとスポーツマーケットを知らなかったので、それしかできなかった。

ゴルフが「格好悪いおじさんのスポーツ」と言われていた時代から、「いかに格好良く見せるか」「ファッション性を高めるか」を追求するのが楽しかった。お客さまからもこれまでにないブランドを提供したことで、大変喜んでいただいた。

当初は売り上げをこのくらい上げたいなどは考えていなかったが、お客さまの喜びが数字になり、高い消化率につながった。買いたくても買えない方が増え、フリマサイトで4万円のパーカーが12万円で売られていたりする。

お客さまから「バッグも作ってほしい」と言われて開発したり、契約しているプロゴルファーから機能の要望をもらい採用したりと、さまざまな声も取り入れていった。

――プロモーションはどう展開したのか?

もともと私がゴルフをやったことがなかったので、当初はゴルフバッグの肩掛け部分がチェーンだったり、真夏でもベロア素材のセットアップを作っていたりした。そういうアイテムはメディアの受けがよく、多くの媒体で取り上げていただいた。芸能人にもファンが増え、テレビCMや番組で着用したりするようなことも増えた。

当初から費用を掛けたプロモーションはほとんどやったことがなく、自然発生的に広まっていった。

2018年に木村拓哉さんにアンバサダーに就任していただいた。その以前から当社のブランドのことを知っていただいており、アンバサダーを御快諾いただけたことで、ブランドの認知もさらに高まったと思う。

――販売チャネルの戦略は?

最初はセレクトショップを中心に店舗卸だけを行っていた。2008年3月に「MARK & LONA」をスタートし、好調だったので表参道ヒルズに直営店を初めて開設した。そこから店舗を少しずつ増やしている。


▲表参道ヒルズ店のイメージ

ECサイトではもともと、各ブランドをまとめ販売していたが、2013年7月に「MARK & LONA」のECサイトを開設した。ブランドの人気とともに、リアル店舗で買えなかった顧客が、ネットで購入するようになっていった。ブランドの認知とともに、ECサイトも売れるようになっていった。

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