2022.09.30

なぜ中国人は「ECセール」に熱狂するのか?【データで分かる中国巨大EC市場<第1回>】

【データで分かる中国巨大EC市場】

<第1回>なぜ中国人は「ECセール」に熱狂するのか?



新連載「データで分かる中国巨大EC市場」では、食品メーカーなどの中国市場開拓を支援しているNEW ORDERの森昭生代表に、中国人ユーザーの行動データや生の声から分かる「中国EC市場の参入余地」を紹介していただく。森代表は中国に滞在し、マーケティングなどの業務に務めながら、現地の消費者のデジタル消費のリアルな状況を見てきた経験がある。現在も中国向けビジネスを手掛けており、現地の生のデータを収集し、日本企業の進出支援を行っている。その豊富な知見から、中国EC市場への参入余地をデータとともに解説してもらう。第1回は「独身の日」や「618」などの巨大ECセールに中国人ユーザーが熱狂している状況や、その背景について森代表に教えていただいた。



今回、中国人ユーザーのECセールにおけるリアルな消費行動を分析するため、2021年の「独身の日」、2022年の「618」で商品購入をした1263人を対象にアンケート調査を実施しました。



月収別にランクをA、B、Cの3パターンに分けて、行動パターンを分析しようと思います。Aが富裕層、Bが中間層、Cが一般層だと思ってください。

ちなみに、弊社は自社でも食品のブランドを開発しているほか、クライアントの越境EC事業のコンサルティング、サポートを行っております。なぜ弊社が月収別の分析にこだわるかと申しますと、中国がいかに豊かになったとはいえ、今回の調査でもわかる通り、まだまだ月収が日本円で10万円〜20万円の層が多い状況です。

そうした層に日本の高額な商品を提供しようとしてもあまり人気がなく、低価格帯のものでは中国国産や韓国産の良いものが近年たくさん生産されるため、いわゆる富裕層にささる商品の開発が求められていると感じています。

そのために月収別に調査をし、富裕層がどのように行動し、ニーズをもっているかを知ることが大切だと考えております。


「独身の日」と「618」の違いは?


まず中国における2大セールと言われる「独身の日」と「618」の違いについて紹介します。「独身の日」は、毎年11月11日に「光棍節(こうこんせつ)」として祝われる独身者の日のことですが、その日にアリババグループ(アリババ)がECセールを開催したことに端を発し、今では中国全土で多くの企業がECセールを行う日になっています。アリババは長らく11月11日の1日限定のセールを実施してきました。昨年からセール期間が長くなりましたが、イメージとしては11月11日に消費が集中するビッグイベントという印象です。


▲「独身の日」はアリババに端を発するセールイベント

「618」は京東グループ(京東)の創業記念日である6月18日に合わせて開催されるECセールです。こちらも京東を始めとして多くの企業がECセールを実施するイベントとなっています。京東は6月頭から18日までセールを実施しているため、全体的に期間の長いセールといったイメージがあります。


▲「618」は京東の創業記念日に合わせたセールイベント

「独身の日」は、やはりアリババの運営するECモール「天猫(Tモール)」や「タオバオ」などが中心となっていますが、京東のECモールでも大きな売り上げを作っています。アリババと京東の売上比率でいうと、アリババが6割、京東が4割くらいのイメージです。

逆に「618」では京東の方が良く利用されています。もちろんアリババも「618」にセールを実施しており、大きな売り上げを上げています。競合企業の創業記念日にセールを実施するというのは、不思議に思えるかもしれないですね。

日本でいうと、楽天のECセールに合わせて、ヤフーも同じ名前のセールを実施するようなものです。日本だと違和感があると思いますが、中国人の方はそんなことは気にしません。


「両セール参加」が大多数


「独身の日」「618」への参加率ですが、リサーチを見てみると、ほとんどの人が両方に参加しています。この傾向は月収クラスに関わらず、皆同様です。



2大セールの期間は多くの事業者がセールを同時多発的に実施しています。タイムセールも多く、ライブコマースも集中します。セールが11月11日に集中する「独身の日」では、特に皆、仕事に手が付かず、通勤中や仕事中も会社のパソコンやスマホで一日中、セールに参加しているような感じです。

私が住んでいた北京市では、路面店でも11月11日にセールイベントを開催していました。それくらい一日中、オンラインでもオフラインでもセールに釘付けということです。逆にセールの事前期間では買い控えをします。この期間はものが売れにくく、消費者はセールで買いたい商品の目星をつけブックマークしたりしてセールの開始を待ちわびている状況です。また店舗やプラットフォームが発行するクーポンをチェックします。日本円で4000円ごとに800円引きされるクーポンもあります。

日本でこれくらい全国民が熱狂するイベントがあるでしょうか?かつての視聴率を70~80%取っていたころの紅白歌合戦や、日本で開催したサッカーワールドカップの日本戦くらいの注目度かもしれないですね。そんなイベントが中国では毎年のようにECのイベントとして行われているわけです。

余談ですが、中国でお馴染みのお年玉「紅包(ホンバオ)」は、セール中は少ない額ですがプラットフォームからもらえ、AliPayなどへのチャージも可能です。

そして、セール当日。ECで商品を買う消費者の行動ですが、まずは売り切れになってしまいそうな商品、割引率が高い商品、価格が高い商品から購入していきます。またセール事前にデポジット金を支払っておいて、当日に残金を支払うような、日本で言うと事前予約のような買い方もあります。

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