楽天グループ(楽天)は今年7月、ECモール「楽天市場」の出店者向けイベント「楽天EXPO2022」において、SKU別に価格やサービスを変えることができる新たな商品管理(通称:SKU対応)を導入すると発表した。商品データの構造を刷新する施策は、店舗側にも大きな対応が求められる。楽天がこのタイミングに大きな変化を選択した理由や、期待できる効果について、マーケットプレイス事業 楽天市場企画部 戦略&サービス管理室 オフィスマネージャーの河津あい氏に聞いた。
【「<後編>蓄積したデータ生かし、5年後にさらなる変化」はこちら】――そもそも「SKU対応」とはどんな施策なのか?SKUとは「Stock keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)」の略で商品管理の一番小さい単位のこと。「SKU対応って何のこと?」と思われた店舗さまも多かったと思う。実際のところは「楽天市場」のデータ構造が大きく変わるということをお伝えしたい。
▲楽天グループ マーケットプレイス事業 楽天市場企画部 戦略&サービス管理室 オフィスマネージャー 河津あい氏――なぜ「SKU対応」が必要なのか?楽天は当面、国内EC流通総額10兆円を目指している。それを達成するためには、これまでの商品管理のやり方では難しいという判断に至った。
「楽天市場」の商品データは、全てが商品ページにぶら下がるという25年前から同じ構造を継続してきた。商品データが全てテキストで書かれている点も問題だった。価格も情報も商品ページにひも付いている。
店舗さまも複数のモールに出店していたり、倉庫の管理が非常に高度化していたりする。商品ページにひも付いた商品データの管理システムでは、今後の機能開発もままならない。「いつか変えなければいけない」というタイミングが来ている。
――これまでのやり方では不都合があるということか?「楽天市場」には3億5000以上の商品が登録されているが、商品情報がテキストに書かれてしまっていると、ユーザーが探している商品が何なのか、判別が難しい。
例えば「根室のさんま」を探していても、「さんま」と検索すると世界中の「さんま」がヒットしてしまう。十数年前までは、検索結果が0件にならないように、該当商品がないときに何を表示すべきかを考えて機能を開発していた。それが今は全く状況が変わり、検索結果に商品がヒットしすぎて、やっぱり目的の物が見つからないという状況になっている。今後はさらに物が増え、ますます見つかりにくい状況になる。データ構造を変えることで、そういう状況を打破したい。
▲「楽天EXPO2022」において三木谷浩史社長が「SKU対応」の実施を発表した――具体的にどのように変わるのか?2023年に大きくデータ構造を変えたいと思う。商品ページは変わらないが、商品データについてはSKUごとに管理できるような形式に変更する。
例えばAmazonさんだと、SKUの情報を集めたリンク集のような形で商品ページを構成している。ヤフーさんはわれわれの従来からのやり方と同じだ。
▲商品ページを維持しつつ、商品データの構造を刷新楽天は両方に寄らない「楽天市場」らしいやり方に進化していきたい。店舗さまの商品ページを大事にしながら、商品情報をデータ化するというハイブリッド形式を導入する。
「SKU対応」により、具体的には、①サーチのUI改善 ②価格違い商品ページ ③定期購入システムの刷新 ④お届け非表示の精緻化 ⑤ボリュームディスカウントの実現――など、店舗さまの要望の大きい機能を順次提供できるようになる。
▲「SKU対応」により、店舗からの要望が多い機能を順次提供■<後編>蓄積したデータ生かし、5年後にさらなる変化https://netkeizai.com/articles/detail/7114