2020.04.24

【プロの落語家に聞く!商いの心構え】第2回「玄人をうならせる、初心者向けの情報発信」


EC事業者にとって「いかにファンを作るか」は重要な課題です。ファン作りに成功すれば、収益が安定化するだけでなく、口コミによる拡散も期待できます。本連載では、噺家(落語家)の林家正蔵師匠の弟子で、多数の落語会を自ら企画・開催し、ファン作りを日々行っている林家はな平さんに、ネットショップに役立つ「ファンづくりのための情報発信」について聞きます。

 

第2回「ファンを獲得するのに何をすべきか」


Q.ネットショップの担当者や店長は、「ファンの獲得のためにどんな情報を発信したらいいか」について苦心している人が多いです。ECサイトのトップページや公式SNS、メールマガジンで、どんな内容を発信すれば、自分やネットショップに興味を持ってもらえるのでしょうか。
 
まずは、玄人でも楽しさを再確認できるような、初心者向けの情報を発信してみてはどうでしょう。そして、初心者でも「もっと詳しく知りたい」と思えるような、玄人向けの情報を織り交ぜて発信してみましょう。一元さんと常連さん、どちらの心もつかんでいくのが、コンテンツ選びのポイントです。

私は数カ月に一度、独演会を開催します。1人で3席、みっちり語り尽くします。独演会というのは1人でやりますから、言わばその落語家の全てが詰まっています。

独演会にお越しいただくお客さまは、大体3パターンに分かれます。1つ目は、独演会で初めて私を知る人(割合的には少ない)。2つ目は、どこかで私を一度知り、独演会で私を見るのが2回目という人。最後は、いつも来てくださる人です。

落語の演目には、分かりやすいものとそうでないものがあります。この3パターンのお客さますべてが納得いく落語を演じる必要がありますから、選ぶ演目はかなり吟味しています。

私は、自分がとてもやり慣れていて、お客さんが分かりやすい演目を一つ選びます。「分かりやすい」ってのは、難しい言葉が少ない演目ということです。これは初心者のお客さま向けにやります。ただ、こういう噺をすると常連さんは「またあのネタか」と思う人もいます。

ここで大事なのは、この噺でキチッと受けること。そうすると初めての方が笑うのを常連さんが見て、「あっ、やっぱりこの噺はおもしろいのか」と再確認してくれるわけです。

そして次の演目としては、初心者には少し難しい噺をぶつけます。これは常連さん向けです。初めての方は少し分かりづらいですが、さっきの分かりやすい噺で受けていれば、頑張って付いてこようとします。落語にはこういう奥深さがあるのかと、落語の世界に引き込むわけです。

もしここで受けなかったとしても、落語自体がつまらないとは思いません。さっきの噺で受けていれば、「まだ自分には聴く耳がないんだな」と諦めてくれます。

このように、落語家の場合は出来るだけ広く受け入れてもらえるように、演目(商品)を変えて対応しています。

 


【林家はな平<プロフィール>】

1984年福岡県生まれ。2007年3月に大学を卒業後、九代目林家正蔵に入門。2011年11月 二ツ目昇進。現在、東京蒲田で開催の「はな平のワンマン」を中心に、都内はもちろん全国各地で公演中。地元福岡でも精力的に活動中。東京都立六本木高等学校では、「落語」授業特別講師も務めている。学習院大学落語研究会顧問。NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、NHK「立川志らくの演芸図鑑」など、テレビ番組にも出演多数。Twitterアカウント:@Humbug1984

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事