2022.08.05

【データに見る「ECの地殻変動」】<第4回>個別企業のEC化率に着目する理由

前回のコラムでは商品カテゴリーごとに、EC化率が大きく異なる点を取り上げた。だが、それはあくまでも各カテゴリーそれぞれの平均値の話。当然、同一商品カテゴリー内でもプレーヤーごとにEC化率は一様ではない。

EC専業や通販系企業はさておき、オムニチャネルを展開する企業にとってEC化率の低さは別段悪いわけではなく、各社の事業構造や経営方針、抱えている事情によって異なるとみるのが自然だろう。

アパレルを例に挙げると、経産省がEC調査で発表した2020年のカテゴリーEC化率は19.44%。しかし、個別企業のデータを見ると、ファーストリテイリングは16%、ABCマートは筆者推定で10%台前半。一方、アダストリアやオンワードは30%超、ユナイテッドアローズも28%と高い。

2020年の家電のカテゴリーEC化率は37.45%だが、筆者推定ではヨドバシカメラは約30%、ビックカメラは約20%。ECに積極的な両社でも平均を下回っているのは、アマゾンなどのネット専業が平均値を押し上げているからだ。カテゴリーを問わずオムニチャネル系企業のEC化率は、これまでのところ最大で30%台といったところか。


バラツキの要因は?


このようなバラツキが生じる要因を次のように分解してみた。①実店舗チャネルの経営上の比重 ②商品調達や物流など流通構造の各社事情 ③EC展開に向けた組織体制の作りやすさ ④成績管理の考え方(例:EC売上高が増加した場合の”手柄”の適性配分) ⑤自社商品のEC販売の向き不向き――といったことが考えられる。





そして何よりも経営トップの意向が大きく左右するのは言うまでもない。EC事業の推進には複雑な要素が絡み合っており、傍らで見るほど容易ではないぞと関係者による嘆きの呟きが聞こえてきそうだ。

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