2022.07.13

【デジタルガレージグループに「アプリ外決済」活用術を聞く】多様な決済手段でユーザーの満足度向上へ

アプリ外決済は一年以内に飛躍的に緩和が進むと予想


ゲームやマンガ、映像、音楽などのデジタルコンテンツのスマートフォンアプリではこれまで、GoogleとAppleがアプリ内の課金や決済について、専用の決済手段の利用を義務付けており、15~30%の決済手数料が発生していた。このアプリ内決済について、一部規制が緩和され、アプリの外部での決済ができるようになりつつある。アプリ外での決済手段を拡充することで、手数料を減らし、その分をユーザーに還元することもできるという。デジタルガレージ(DG)でマーケティング事業部門を統括する北田俊輔執行役員は、「デジコンアプリの提供事業者は、多様なアプリ外決済手段を用意することで、アプリのユーザーの満足度を高められる」と話す。決済代行事業を展開するDGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)の篠寛社長と、DGの北田執行役員に、アプリの決済を巡る業界動向などについて話を聞いた。



国際的なプラットフォーム規制の流れ


――デジタルコンテンツなどのスマートフォンアプリの決済は現在、どのような状況になっているのですか?

篠:デジタルコンテンツやサービスのアプリは、アプリストアを運営する、GoogleとAppleが、それぞれの決済システムの利用を義務付けています。物販などのEコマースアプリとは異なり、自由に決済手段を選ぶことができません。

GoogleとAppleは、アプリの提供事業者から、販売額の15~30%を決済手数料として徴収しています。

北田:アプリストアの市場規模は、2022年に2兆円規模になると想定されています。そのうち、15~30%にあたる3000億~6000億円を、手数料としてGoogleとAppleが徴収していると考えられます。非常に高い比率の手数料となっていますが、この手数料が抑えられれば、ユーザーに還元できると考えるアプリ事業者も多いのです。


プラットフォーマーの集客力やセキュリティー対応


――なぜ、GoogleやAppleは決済手段を限定し、高い手数料を課しているのでしょうか?

篠:両社は、ブランド力が高く、アプリストアにユーザーを集客する力があります。Google・Appleが提供する決済手段は、モバイル端末との互換性が高く、アプリと同じ画面上で決済や課金を完了できるため、ユーザーはストレスなく利用できます。端末の顔認証システムを利用することもでき、クレジットカード情報は暗号化して保存されるため、非常にセキュリティーが高いこともメリットです。

プラットフォーマーが、自社の決済手段の利用を義務付けていたことと、手数料を高く設定していたことの背景には、こうしたことがありました。

ただ、こうしたプラットフォーマーの寡占は各国で問題となり始めています。裁判や改善命令に発展するケースもあります。国際的なプラットフォーム規制の流れが起きているのです。

北田:現在は、ゲームや電子書籍などのコンテンツデベロッパーが、自社でテレビCMやウェブ広告を打って集客するのが一般的になっています。GoogleやAppleがアプリストアに集客していた時とは、様相が違ってきています。

今までは、アプリを作れば一定の売り上げが立っていたという時代もありました。現在は、デジタルコンテンツの市場を、一部のアプリ提供事業者が独占しています。新規参入したアプリ事業者が売り上げを上げるためには、効率的にユーザーを獲得していく必要があります。

篠:2022年3月にAppleは、書籍、音楽、ビデオなどのコンテンツを閲覧・視聴するリーダーアプリに対して、アプリ内に外部サイトへのリンクを設置できるようにしました。アプリユーザーは、アプリ内のコンテンツを購入する際、外部のサイトへ遷移して、決済ができるようになったのです。

北田:アプリとは別のサイトで決済するアプリ外決済では、アプリ事業者は、自由に決済手段を用意することができます。手数料を安く抑えられるという点もメリットです。決済手段が複数あれば、ユーザーの満足度向上につながりますし、手数料のコストダウン分を、ユーザーに還元することもできます。

篠:ただ、ユーザーにとっては、アプリから外部サイトへと遷移し、決済情報を入力するというプロセスが増えます。アプリ上でシームレスに支払えたプラットフォームの決済よりも、離脱率が高まる可能性があります。支払いプロセスがシンプルな決済手段を用意する必要があります。また、ユーザーの選択肢を広げる意味で、Google・Appleの決済システムと併用するとよいでしょう。

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