2022.07.07

「SHOPLIST」前社長の張本氏が自社ECに新提案 「お試し」「リユース」でブランド力向上を強力支援

Free Standardの経営陣。写真左から黒木主唯CDO、野村晃裕COO、張本貴雄CEO、森内健太CTO

ファッションECモール「SHOPLIST」を運営するクルーズショップリストの前社長である張本貴雄氏が立ち上げたFree Standardは7月7日、ブランドの自社ECサイトに「お試し」「リユース」の機能を実装できる流通ソリューション「Retailor(リテーラー)」の本格提供を発表した。同時に累計5億4000万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。調達資金を生かし、新ソリューションの導入企業拡大を進める。

「Retailor」は「お試し」と「リユース」の2機能を提供することで、ブランドの自社ECサイトの購買率やLTVを高め、外部プラットフォームに流れていた二次流通市場の収益を自社で確保できるソリューションだという。商品購入の体験価値を高めると同時に、ブランドとの接点のハードルを下げることができる。自社ECサイト内で一次流通から二次流通に至るサーキュラーエコノミー(循環経済)を築くことができるため、ブランドの品質を維持し、顧客とブランドの関係性を継続させることができる。


▲「Retailor」が提供する「お試し」「リユース」のイメージ

「2000年代は品ぞろえ、すぐ届くなど『利便性』が求められていた。2010年代はEC市場の競争が激化し、モールのセールやポイントが活発化した。フリマアプリが普及し、なんでもお得に買えるようになった。2020年代はEC市場がさらに成熟し、手軽にお得に買えるのは当たり前で、消費者はその先を求める時代になっていく。ECにおいては『安心』がキーワードになると考えている。当社は安心して物が買える時代のトップランナーを目指そうと思っている。そのために公式ECサイトで安心を提供するために必要な機能としてサービスを開発した」(野村晃裕COO)と話す。


「お試し」「リユース」2機能の詳細は?


「お試し」機能は、ブランドの⾃社ECサイト上で商品を「試す」という購⼊体験を提供できるようにするサービス。サイトのHTMLコードに1⾏の専⽤タグを埋め込むだけで、⾃社ECサイトに「お試し」ボタンを表⽰でき、「お試し」サービスに必要な在庫管理や配送、クリーニング、顧客サポートなどのバックエンド業務はFree Standardが担う。


▲「お試し」機能の導入イメージ

「お試し」機能を導入することで、自社ECサイトで「購⼊する」か「購入しないか」という2択ではなく、「試す」という第3の選択肢を提供できる。「お試し」は有料サービスとすることで、コストをカバーすることができ、本気度の高い顧客を集めることができる。「お試し」を利用した顧客が商品を購入したいと思ったら、「お試し」の利用料を引いた形で、そのまま購入できる。

「『購入する』だけだとコンバージョン率は1%だけかもしれない。『試す』を提供することで、購入しなかった99%の中から1~2%を顧客化することができるかもしれない。商品を体験する機会を提供することでブランドのファンは増えるはずだ。さらに離脱していた潜在顧客を顧客データとして資産化していくことで、次の購入に向けてのアクションを起こすことができたり、『お試し』で感じた声を集めることができたりする」(張本CEO)と話す。


▲張本貴雄CEO

「リユース」機能では、ブランド独自のリユースサイトを構築できるサービス。リユース品の取り扱いに不可⽋な商品収集や真贋確認、商品メンテナンス、保管、撮影、登録といった業務はFree Standardが担う。


▲「リユース」機能で構築したリユースサイトのイメージ

これまでブランドの2次流通はフリマアプリなど外部プラットフォームで行われていたが、ブランドが公式のリユースサイトを構築することで、顧客の商品買い替えをサポートしたり、安心してリユース品を購入したいというユーザーのニーズに応えたりできるようになる。

「ブランドとしても2次流通が外部プラットフォームで行われることで、自社ECサイトの売り上げが少なからず減少しているのではないかと懸念する声もある。自社で2次流通をカバーできれば、これまでなかった収益を生むことができる。もう1つ懸念材料となっているのが、ブランドの品質リスクだ。外部プラットフォームでは偽物やメンテナンス状態の悪いアイテムが流通している可能性がある。そういったアイテムを購入したユーザーもブランドの責任ではないと分かっていながらも、ブランドへの評価が下がる恐れもある。こうした懸念を『リユース』機能で払しょくできる」(野村COO)と話す。

「お試し」「リユース」ともに運営費用として月額費用を設けている。「リユース」では、商品販売時に販売手数料を徴収する。「お試し」では、サービス利用時には手数料は徴収しないが、そこから本購入に至った場合は販売手数料を徴収するモデルとなっている。

「すでに先行していくつかのブランドに導入していただいている。さまざまな商品ジャンルに対応できると考えている。強いて言うなら低単価のブランドは合わないかもしれない。自社ECサイトの価値向上を図りたいブランドや、新たな体験価値を提供したいブランドに提供していきたい」(張本CEO)と話す。


ヤマトHDが立ち上げたファンドの第1号投資先に


Free Standardは7月7日、プレシリーズAラウンドとしてANRI、千葉道場、グローバル・ブレインとヤマトホールディングス(ヤマトHD)が共同で設⽴したCVCファンド「KURONEKO Innovation Fund」、D4V、その他投資家を引受先とする累計5億4000万円の資⾦調達を実施したことも発表した。

「『KURONEKO Innovation Fund』の国内初の出資先として選んでいただいた。『お試し』も『リユース』も配送が重要になるサービス。そのインフラを持つヤマトHDさんの支援を得られているのは心強い」(野村COO)と話す。

調達資金はさらなるサービス開発や導入企業の獲得、運営体制の強化などに充てる方針だ。



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