2020.04.13

【プロの落語家に聞く!商いの心構え】第1回「ファンを作るために心がけることとは?」

落語家の林家はな平さん


EC事業者にとって「いかにファンを作るか」は重要な課題です。ファン作りに成功すれば、収益が安定化するだけでなく、口コミによる拡散も期待できます。本連載では、噺家(落語家)の林家正蔵師匠の弟子で、多数の落語会を自ら企画・開催し、ファン作りを日々行っている林家はな平さんに、ネットショップに役立つ「ファンづくりのための情報発信」について聞きます。

 

第1回「ファンを作るために心がけることとは」


Q、商人(あきんど)である、ネットショップの店長が、ファンづくりを行う上で心がけるべき点について、プロの噺家の視点から教えてください。

以前、噺家の先輩に言われた言葉があって、いつもそれを心掛けています。

「初めて落語を聴くお客さんには、細心の注意を払ってやりなさい」

これは、「初心者のお客さんを大事にしなさい」という、簡単な意味だけではありません。「自分の落語が、そのお客さんが最後に聞く落語になるかもしれないと思いなさい」という意味も含んでいます。

落語という芸能は、他のエンタメと違って、弱い芸能なのです。

例えば、とてもつまらない映画を1本観たとします。だけど、それで「映画ってつまらない。もう映画は二度と観ない」とはならないでしょう。その作品がつまらないだけで、また別のおもしろい映画を探して観に行くはずです。

ところが、落語の場合は違います。まず、普段の生活で落語に触れるお客さまは少ないですから、初めて聴いた落語がつまらなかった場合、「落語ってつまらない。もう落語はいいや」となりがちなんですね。

なので、私は、初めて落語を聴くというお客さまが多い場合は、あまり冒険(難しい噺)はしません。とても分かりやすい噺をして、「落語っておもしろい」ということを伝えることだけに集中します。

ネットショップでも、同じことが言えるのではないでしょうか。多くの人がネット通販を利用すると思いますが、利用したことがない人もまだまだ多いはずです。

あなたのネットショップを利用する人が、初めてネット通販を利用する人だった場合、そこで不便さやトラブルを経験してしまうとしたら、とても不幸ではないでしょうか。ネット通販の便利な部分や、リアルなお店では体験できないワクワクを、体験することなく、これから日々の生活を過ごしてしまうかもしれません。

あなたのショップで商品を注文したお客さまが、初めてネット通販を使ってみたお客さまだと考えて、一人一人に一球入魂の丁寧な対応をすることに集中してはいかがでしょうか。

ネットショップに限らず、どんな商売でも、初めて利用する方がいると思いますので、それを念頭に集中することが肝心だと思います。



【林家はな平<プロフィール>】
1984年福岡県生まれ。2007年3月に大学を卒業後、九代目林家正蔵に入門。2011年11月 二ツ目昇進。現在、東京蒲田で開催の「はな平のワンマン」を中心に、都内はもちろん全国各地で公演中。地元福岡でも精力的に活動中。東京都立六本木高等学校では、「落語」授業特別講師も務めている。学習院大学落語研究会顧問。NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、NHK「立川志らくの演芸図鑑」など、テレビ番組にも出演多数。Twitterアカウント:@Humbug1984

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