2021.11.12

【<徹底解明>モール物流戦争の行方】第5回 店舗で異なる導入価値 有力2社の戦略に迫る


機会損失減らす管理術


ビームテックにとって、在庫を分散することでの機会損失のリスクも懸念材料になっていた。

「当社の場合、システムで需要予測を行っているが、3モールすべてで正確に予測することは難しい。少しでも機会損失をなくしたいので、在庫を適正に分散できない状態は避けたい。在庫情報の一元管理においてもシステム面で課題がある。当社のシステムでは現状、『フルフィルメントサービス』との在庫連携に対応できない」(吉田取締役)と話す。


ビームテック 吉田甚一朗取締役

オーエープラザでも「『フルフィルメントサービス』は始まって間もないサービスということもあり、自社倉庫との在庫連携まではできていない。『FBA』と『RSL』は連動システムができており、在庫が減ったタイミングで補充するルーティンができている。『フルフィルメントサービス』は一部を手動で対応している」(王社長)と語る。

「フルフィルメントサービス」もすでに、主要な一元管理システムとは連携しており、対応システムを随時拡大するとアナウンスしている。現在、対応していないシステムも、いずれ対応されるだろう。


自社でブランディング


ビームテックでは自社出荷でも楽天の「あす楽」や、ヤフーの「優良配送」に対応できているが、Amazonの「プライムマーク」には対応できていない。Amazonが今年7月から、「FBA」以外の「プライムマーク」の条件を厳格化したことが原因だ。

「『プライムマーク』に対応するには、土日祝日も出荷できないといけないので諦めた。現状では自社出荷することで、購入したお客さまに『Amazonで買った』という印象よりも、『ビームテックで買った』という印象を持っていただき、当社のブランド認知を上げる方を優先させていている」(吉田取締役)と話す。

オリジナル商品を扱う店舗にとって、ブランディングの観点から自社出荷を選択するケースもあるだろう。


自社と効果的な併用も


オーエープラザは、商品やサービスによってモール物流と自社出荷を使い分けている。配送日や同梱物の指定がある商品、スペックのカスタマイズに対応する中古パソコンなどは自社倉庫から発送している。

ビームテックも今後、自社出荷とモール物流の併用することを検討している。

「外注を効果的に活用することで、当社もよりスケールできるだろう。まだ、リソース面などでモール物流の導入を進められていないのが現状だ。3モールの物流サービスをすべて活用するというよりは、自社倉庫+1というイメージで検討を進めたい」(吉田取締役)と話す。

店舗の状況や商材・サービスの特性によって、モール物流の利用価値は異なる。モール側も必ずしも自社の物流サービスにすべての在庫を寄せるのではなく、効果的な併用を促している。店舗はまず、モール物流の特性を正確に把握し、自社が導入するメリットやデメリットを理解することが重要だろう。

大手モールが今後も物流サービスを強化し続けることは間違いない。店舗はモール側が物流サービスの導入メリットを高め続けることも理解しなければならない。




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