2020.04.02

【インタビュー】米D2CのAllbirds、原宿店は売上世界一 返品・交換無料のECで成長加速

蓑輪光浩マーケティングディレクター(写真左) 石井孝憲ECシニアマネージャー



米国のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)シューズブランド「Allbirds(オールバーズ)」は今年1月、日本市場に進出した。俳優のレオナルド・ディカプリオ氏が出資し、米国のニュース誌「TIME」が「世界で一番快適な靴」と評した注目ブランドが東京・原宿にリアル店舗を開設すると長蛇の列ができた。原宿のリアル店舗は、世界で一番売れている店舗になったという。4月1日、国内向けのECを開設。さらに人気が高まりそうだ。日本でも注目を集めている理由や、EC展開の戦略について、Allbirds合同会社の蓑輪光浩マーケティングディレクターと石井孝憲ECシニアマネージャーに聞いた。


3年で30回くらい商品改良


――「Allbirds」とはどんなブランドですか。

蓑輪:石油由来の素材を極力排除し、サステナブルなマテリアル(素材)を使った商品を開発しています。環境負荷の低いビジネスモデルが認められ、「B Corp」の認証も得ています。トレンドに流されないタイムレスなデザインも特徴です。カーボンネガティブ(排出するよりも多くの二酸化炭素を除去するということ)な商品開発をなるべく進めており、そういった取り組みを社会に還元していこうという姿勢も強く持っています。

代表的な商品シリーズである「ウール」では、素材としてメリノウールを使用しています。髪の毛より6分の1くらい細いウールを使用することで、風合いだけでなく、通気性、保温性が高く、洗える点も好評です。シューレース(靴ひも)は、ペットボトルを再利用し、ボトル1本から両足分の2本を製造しています。

「シュガー」というシリーズでは、サトウキビ由来の素材を使用していますが、これはエタノールを作る際に生まれる原料を活用しています。この技術は、特許を取るわけではなく、オープンソースの技術として開放しています。さまざまな方に技術を活用していただいた方が、製造コストが下がり、研究開発費も増えていきます。カーボンネガティブな商品が増えることが、地球環境にとって良いという考えなのです。

創業時からサステナブルの視点や、米国の西海岸の自由なスタイルが社内にあります。社員の6割くらいが女性で、米国のオフィスにはたくさんの犬がいます。自然なライフスタイルやサステナブルな視点がプロダクトに反映されているのです。


サステナブルなコンセプト、タイムレスなデザイン

――米国のサンフランシスコで誕生しているブランドですが、シリコンバレーのIT企業の思想に通ずるものがあるのでしょうか。

簑輪:インターネットはもともと、軍用に開発されましたが、みんなが使えるプラットフォームとして発展してきました。グーグルも基本的にサービスはフリーで展開しています。考え方はIT企業に近く、例えば「ウール」は、発売から3年ほどたちますが、これまでに30回くらいアップデートしています。

もちろん開発段階で改良を重ねて発売していますが、発売後もお客さまの意見を吸い上げ、反映させることを重視しています。例えば、着用している方から「踵にマメができる」という意見をいただいたら、「なぜマメができるのか」を研究し、踵部分の素材を厚くしてホールド感を高めたり、素材を改良していったりしています。

スマホアプリのようなイメージでアップデートできるのが、D2Cの良さでもあります。一般的な卸販売の場合、短期間に改良すると、小売店から新しいバージョンを求められるため、旧型の在庫が余ったり、営業面でも支障を来したりします。

当社はD2Cなので、販売チャネルを自分たちでコントロールできます。流通に中間マージンがないので、改良コストもわれわれで吸収できます。

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