2021.09.08

ロボットによる自動倉庫を実店舗に併設し、顧客体験を向上する【「オートストア・システム 鴨弘司社長」連載第3回】


新しい環境での自動化


マイクロフルフィルメントはなぜ可能なのか?

ここでは、MFCを導入すると、貴社のオペレーションにどんなメリットをもたらすのかについて、解説しましょう。

MFCは、保管スペースと倉庫スペースを、現場に合わせて設計・構築することに重点を置いています。従来から運用されている大規模倉庫ならば、追加オプションとして構築できます。地域の小売店でより多く利用できるようにすることにより、実店舗の顧客と、オンラインの顧客の両方のニーズに対応します。

これが効果的である理由はいくつかあります。


1.オーダーフルフィルメントと配送時間の短縮化


大規模な倉庫による受注・発送業務は、最近まで効果的でした。現在では、翌日または当日配送に対する需要が高まっています。複数の地域に分散配置されている大規模な倉庫では、地域レベルのサプライチェーンを効果的にサポートすることに適していない実態があります。

米物流会社のeFulfillment Serviceによる2017年の調査では、89%の消費者が「1~2日の配送」を「速い」と考えていました。 その後、Amazonが当日配送サービス「One Day Prime」を導入したことにより、Amazon以外の多くの小売店が、注文から数時間以内に当日出荷を行う流れができてしまいました。

即日配送・即日出荷の時代を迎えるにあたり、個々の企業がこの需要をどのように満たすことができるかを考える必要があります。


2.生産性の向上


実店舗レベルでの受注発送は、配送時間を短縮するために必要ですが、手作業による受注発送業務には時間がかかります。歩行と手作業によるピッキングが、受注発送にかかる時間の50%以上を占めると言われています。

ロボットは、人よりも効率的かつ一定の速度で特定の作業を行うことができるため、生産性の向上に貢献します。

米国の物流関連のメディアSupplyChainDive社は、Deloitte社の調査を引用して、「スマートファクトリー(AIやIoTなどのデジタルを活用した工場)」テクノロジーに投資している企業は、「労働生産性などの指標が平均で10%から12%向上する」と述べています。

また、MHIは、保管・検索の自動化により、オーダーの精度が99.99%以上になる可能性があることを指摘しています8。


3.利益率の向上


eFulfillment Serviceによると、eコマースの注文処理にかかる平均的なコストは、注文金額の平均70%にも及ぶとしています。 この数字には、手作業によるピッキングや出荷のための人件費、間接費、非効率な注文の分割、返品などの費用が含まれています。

これらの費用はすぐに利益率を低下させます。小売業者は、eコマースが思ったほど利益を上げられないことに気付くかもしれません。ただ、オンラインショッピングをすぐにやめようという小売事業者は少ないはずです。

自動化によって、店舗でのピッキングにかかる人件費や、労働力に付随する物流コストなどの「利益を奪う要因」を取り除くことができます。省スペースかつ効率的な方法で、利益を拡大できる可能性が高くなります。

Eコマースの需要が拡大し、迅速な配送に対する期待が高まっている中、既存のオペレーションを可能な限り最大限活用することが重要になっています。MFCのようなシステムは、実店舗をサポートするだけでなく、地域のeコマースの需要を満たしてくれるようになるでしょう。(つづく)




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