2021.07.14

Eコマース市場の成長はブリック&モルタル(従来型の店舗販売)との融合で【「オートストア・システム 鴨弘司社長」連載第1回】

Eコマース市場の成長は、ブリック&モルタル(従来型の店舗販売)との融合で

【連載】「Eコマース市場の成長はブリック&モルタル(従来型の店舗販売)との融合で」第1回

はじめに


利便性は、今や消費者のあらゆる意思決定の原動力となっており、私たちの購買行動における重要な要素です。迅速なアクセスや、入手のしやすさが、BtoCのビジネスを左右する時代になっています。競争力を維持するため、あらゆる分野の企業が、常に進化することを求められています。

過去20年間、Eコマース市場は、主要なブランドやプラットフォームが牽引することで、大きな成長を遂げてきました。技術革新による配送速度の向上、在庫の増加、選択肢の増加などにより、eコマースに対するお客さまの期待は高まっています。

購買行動は常に変化していることから、お客さまは常にオンラインで次の買い物をする準備をしています。ブランドは、常に準備を整え、この変化に柔軟に対応しなければなりません。しかし、オンラインショッピングが増えてはいますが、一方で、従来の店舗での買い物が重要視されていることに変わりはありません

ブランドは何をすべきか。すべての人にすべてを提供するにはどうすればよいのでしょうか。このコラムでは、「Eコマース市場の拡大」「サプライチェーンにおける実店舗の役割」「Eコマースにおけるマイクロフルフィルメントの意味」「自動化とマイクロフルフィルメントによって先進的なブランドが享受するメリット」そして「ロボットが意味するもの」について、解説していきます。
 

「マイクロモーメント」ショッピングの定着


世界的に見ても、オンラインショッピングは今や最も人気のあるアクティビティーの一つです。Eコマースは多くの小売企業のビジネスのあり方を、大きく左右するようになっています。

2019年の時点で、オンライン取引の割合は、全世界の小売全体の14%を占めるに至っています(Statista調べ)。2023年には、この割合が22%にまで増加すると予想されています。2019年の世界のEリテール市場の売上高は3兆5000億ドルに達しました。

世界最大級のネット通販の媒体「Digital Commerce 360」によると、米国の小売業界に占める、Eコマースの売上高は、2018年の時点で14.3%を占めており、2019年には15.8%に上昇したということです。同媒体では、2020年には、21.3%を占めるようになるだろうとと推定していました。2

他のことをしながら、いつでもどこでも買い物を楽しめる「マイクロモーメント」ショッピングの進展も、この成長の一翼を担っています。

28カ国における、18歳から73歳までの約1万9000人の買い物客を対象に、IBMと全米小売業協会が行った、最近の調査では、回答者の71%が「マイクロモーメント」で買い物をしていることが分かりました。そして、3人に1人以上が少なくとも週に1回、最大で1日に数回、マイクロモーメントで買い物をしていることも分かったのです。

ブランドは、お客さまがどこでも、いつでも、好きなときに買い物をしていることに気付いています。

スムーズなEコマースエクスペリエンスへの期待が高まる中、企業は、既存のシステムでは対処が困難なほど、「処理時間の増加」という問題に直面しています。より大規模なストレージスペースの提供も、流通レベルでの大きな課題の一つです。手動のオペレーションでは、現在の着実な成長を維持することができないため、新しいシステムの導入が検討されています。

全国規模でのロックダウンの実施が余儀なくされた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、デジタル消費の上昇をけん引しました。これに伴い、多くの企業は、eコマースへの移行を加速させました。一方でこうした企業は、移行における複雑さの課題に直面しています。

ブランドは、自社とそのサプライチェーンに変革が求められていることを認識しています。市場は、現状を維持する人を決して好意的に捉えることはありません。

しかし、これには裏表があります。Eコマース市場が成長する一方で、実店舗を持つサプライチェーンの市場は、現状変更を余儀なくされています。

高密度の施設でスタッフを抱えて営業している小売業者は、より高い感染拡大のリスクに晒されることとなります。Eコマースの注文が急増しているときに、当直スタッフの数を減らさなければならなかったのです。少ない人員と拡大する需要の中で、この課題は深刻なものでした。

この結果、ドイツをはじめとする欧州の主要国や米国の小売業者は、この半年間、苦境に立たされました。

ドイツのビジネス誌「TextilWirtschaft」は、ドイツの小売業者10社のうち7社が、過去2四半期に比べて売り上げが減少していると報告しています。 全体の3分の1の小売業者は、この減少幅が少なくとも20%以上であり、多くの小売業者はさらに厳しい売り上げ減少を経験しました。

このような状況の中、物流や小売りに関するメディア「SHD Logistics」は、EUの消費者の83%が、パンデミック後もオンラインショッピングを継続する予定であると報告しています。効率と生産性を最大限に高めることをこれまで以上に重要視しています。

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