2021.07.12

【問われる出品者管理責任】デジタルプラットフォーム新法の契機になった『火災事件』を追う Amazon訴えた男性の3つの主張とは?

火災にあった加藤さんの自宅(写真)


3つの点を問題視


加藤さんは、訴訟の中で、3つの点を主張している。①マーケットプレイスで出品者が販売する商品についてアマゾンにも責任がある ②事故が起きた際に、アマゾンが出品者の連絡先を教えてくれなかったのは問題 ③火災事故が起きたことを周知してほしいとアマゾンに依頼したが、対応していないのは問題だ――の3点だという。

②について、加藤さんは、アマゾンに掲載された電話番号が不通だったことも含めて、特商法違反ではないかと主張している。「アマゾンがプラットフォームとして、特商法違反の出品者を規制すべきではないか」(加藤さん)と話す。

加藤さんによると、問題のモバイルバッテリーで、同様の被害にあった消費者は、加藤さんの他にも複数人いるのだという。

「同一商品について、複数の製品トラブルが発生しているにもかかわらず、プラットフォームとしてアナウンスがされない点が問題だ」と指摘している。火災の原因となった商品は現在も、アマゾンのマーケットプレイスで販売されている。「オーキーはアマゾン以外のプラットフォームでも同じ製品の販売を継続している。問題は、アマゾンだけに限ったことではない」(同)と話す。

なお、アマゾンでは、今回の火災事件について「個別の案件については回答を控える」とコメントしている。


出品者規制いたちごっこ


アマゾンもこれまで、マーケットプレイスに出品された商品を、野放しにしていたわけではない。2021年5月には、世界のアマゾン全体で、200万件以上の偽造品を差し押さえ、600万件以上の不正な販売事業者のアカウント作成を阻止したと発表した。

ただ、アマゾンのマーケットプレイスでは現在も、連絡先が不明確な出品者が多く見られる。一見して正しく連絡先が表示されていても、オーキーのように、つながらないケースもある。

アマゾンは、出品者の管理体制について、「アカウント開設の過程で販売事業者に本人確認書類の提出を求めるほか、アマゾン独自の技術により販売事業者の情報を精査し、不審な場合は阻止している」(同)と話す。

米国カルフォルニア州の裁判所では2020年8月、「アマゾンのマーケットプレイスで販売された製品の不良について、アマゾンがその責任を負うべきである」とする旨の判決を下した。法制度が異なる米国の話を、国内にそのまま当てはめられないが、プラットフォーマーの責任を問う声は、グローバルで高まっている。

前出の加藤さんの火災事故の件は、取引DPF法制定に向けた政府検討会でも話題に上った。加藤さんの事件が、「危険物等の出品停止」や「連絡先開示請求権」の導入の端緒になったことは、容易に想像できる。加藤さんは、「DPFを規制する新法の制定や、米国の判例などによって、プラットフォームの責任を追及する機運が高まってきている」と話す。

コロナ禍の中、アマゾンの利用は拡大している。アマゾンをはじめとしたプラットフォーマーには、単なる法令順守にとどまらない、より高いレベルの、規範意識と出品者管理が求められていると言えそうだ。

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