2021.06.17

【<インタビュー>ALiNKインターネット×アウトブレインジャパン】クッキーレス時代のキーワードは“文脈形広告”

アウトブレインジャパンの益田敦司氏(写真左)とALiNKインターネットの片岡拓也氏(写真右)


気象に関する情報サイト「tenki.jp」を運営するALiNKインターネット(アリンク)は、同サイトに、アウトブレインジャパン(アウトブレイン)が提供するレコメンドプラットフォームを導入している。ネット広告業界では、今後数年内に「サードパーティークッキー(※)」を使ったターゲティング広告の配信ができなくなるといわれている。年間約48億PVを記録し、多くのユーザーと広告主をつなぐ「tenki.jp」では、「サードパーティークッキー」を使わずに、ユーザーに適した広告の配信が行える「コンテキスト(文脈型)広告」を活用している。アリンクの片岡拓也氏と、アウトブレインジャパンの益田敦司氏に、コンテキスト広告の特徴について聞いた。


広告効果1.5倍の「天気」


――「tenki.jp」について聞きたい。

片岡:アリンクは、(一財)日本気象協会と共同で天気予報専門メディア「tenki.jp」を運営している。「tenki.jp」は、学生から高齢者まで幅広く利用しており、閲覧数は年間約48億PVに達する。台風や梅雨の時期など、気象が変わりやすい時期に閲覧数が伸びる傾向がある。

「tenki.jp」は、大手メーカーの清涼飲料水の広告や、医薬品の広告、遊園地などのレジャー系の広告の掲載が多い。熱中症が気になる暑い時期は清涼飲料水のクリック率が高くなる。生活に関する広告は成果につながりやすい。

「tenki.jp」では、「天気マッチング」という仕組みを導入している。その日の気象状況によって、広告を出し分ける仕組みだ。「雨の日に広告を出す」や「熱中症の危険度を示す数値が4以上の時に広告を出す」といったことも可能だ。「天気マッチング」を使うと、通常のターゲティング広告よりも、クリック率が1.5倍高いというデータもある。


ALiNKインターネットの片岡拓也氏


“クリーン”な広告を配信


――「tenki.jp」がサイト内の広告配信にアウトブレインのプラットフォームを使っている理由は?

片岡:「tenki.jp」は非常に公共性の高いサービスだ。ユーザーのことを考え、広告審査を厳正に行い、クリーンな広告を配信する必要がある。そういった面で、アウトブレインのサービスが真価を発揮している。

益田:アウトブレインは、メディアを訪れた読者に対して、読者が知りたい情報をレコメンドするプラットフォームだ。広告とともに、読者の役に立つ記事やコンテンツをレコメンドしている。

アウトブレインは、米国ニューヨークで創設され、現在では世界55ヶ国に対して、20の言語でレコメンドサービスを提供している。当社のプラットフォームを通じて、1日あたり100億件の広告やコンテンツのレコメンドを実施している。国内では、「tenki.jp」や朝日新聞など、約400のメディアに導入されている。

当社は、「サードパーティークッキー」のみに頼らない、広告配信サービスを提供している。グーグルは20年、ブラウザの「グーグルクローム」において、「サードパーティークッキー」の提供を2年以内に段階的に廃止すると発表した。将来的には、いま主流となっているリターゲティング広告(以下リタゲ広告)が使えなくなる可能性が高い。

当社では、この課題を解決するものとして、コンテキスト広告を提供している。読者が読んでいるコンテンツに対して、関連性が高いと思われる広告やコンテンツを表示する仕組みだ。読者のことを追跡しなくても、高い広告効果が期待できる。広告を配信するメディアの機能を補完し、コンテンツに共感する読者を増やすことにつながる。


アウトブレインジャパンの益田敦司氏

片岡:ターゲティングができなくなることは、広告単価を下げることになり、当社のようなメディアにとってもダメージは大きい。ただ、今までと同様にターゲティング広告を使うと、不快に思うユーザーが一定数いるのも事実だ。コンテキスト広告を使えば、ターゲティングせずに、読者に役立つ情報を提供することができる。媒体にマッチした広告を配信できるようになれば、ユーザーの満足につながる。

――広告主は今後どんなことを意識すべきか?

益田:追跡型の広告は、ユーザーの満足を考えれば限界に来ている。広告主は、広告出稿先のメディアに注目すべきだ。

これまでのネット広告は、クリック率や短期的な費用対効果を意識しすぎる風潮があった。結果的に、ネット広告が、ユーザーのイメージダウンにつながってしまっている。広告をクリックすると、全く違うイメージのサイトに遷移してしまうというケースもあった。

広告を出稿するメディアに目を向け、メディアと読者の期待に応えるようなコンテキストと広告クリエーティブを意識していくべきだ。

 
※サードパーティークッキーとは…ユーザーが閲覧しているサイトのサーバーではなく、広告配信サーバーなど第三者のサーバーが発行するクッキー。