一般社団法人日本コールセンター協会(CCAJ)は2020年5月、コロナ禍でのセンター運用の対策指針を公開した。コールセンターが持つ社会的機能の維持に向けた項目を提示し、会員各社に実践を呼び掛けるものだ。CCAJの下村会長に、ECでの顧客接点や社会インフラとしての役割が高まるコールセンターの在り方について、公開1年での指針の浸透具合や近年の取り組みを聞いた。
――昨年策定した対策指針について教えてください。 コールセンターの「3密」の労働環境に対する不安や懸念が、報道やSNSで取り上げられ、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されたことを受けて、「コールセンターにおける新型コロナウイルス感染症対策に関する指針」の策定に着手し、同5月1日に公開しました。
本指針に関するアンケートを2020年8月、会員に対して実施しました。その中で、運営の継続にあたり指針の見直しの必要性などを聞いたところ、ほとんどが「指針の見直しは不要」という回答でした。
指針の改定に当たっては、今後の状況を注視し、政府や関係省庁、地方自治体と連携しながら、指針の強化または緩和を検討していきます。
運用面のDXは必至――この1年で会員企業から寄せられる課題に変化はありましたか?コロナ対策の一環という側面もありますが、テレワークへの関心が高いです。
2020年6月に実施した実態調査によると、2019年度は在宅テレコミュニケーターをすでに採用しているコールセンター企業は3社でしたが、2020年度は14社に急増しました。
さらに、在宅勤務に関しては、これまでの導入できるかどうかという課題から、導入・運用後に起こる課題に関心が移ってきています。
――今後を見据えコールセンターが目指すべき姿は? コロナ禍でコールセンターにおける非対面・非接触によるサービスは価値を高め、生活に欠かせないインフラとして認識されつつあります。その認識を定着させるためには、コールセンターの事業継続、すなわち、生活者・お客さまと常につながり続けることが重要です。
アフターコロナ、ニューノーマルにおいても、人とのつながりを感じられることがコールセンターに求められる最も大事な役割だと考えます。
――実現に向け、解決すべき課題は? 人の行動が制限されるパンデミックという状況下で、事業運営の見直しやデジタルシフトが加速しました。その歩みを止めないことです。
拠点の分散やテレワークにより特定の地域や場所に依存せず、安定的に運営できる環境を作り上げること。そして、メール・チャットを用いたチャネルミックスや自動化対応などのデジタルコミュニケーションにより、いつでも・どこでも・誰でも・多様な方法でつながることが求められます。