EC事業者や金融機関などに不正検知サービスを提供する、かっこは2020年12月、東証マザーズに上場した。不正検知サービスはECを中心に約2万サイトが導入。国内では最大規模の導入数を誇っている。不正検知サービスのほか、後払い決済の導入支援やデータサイエンスサービスも手掛けるなど、EC企業向けの支援サービスの拡充を図っている。岩井裕之社長に東証マザーズに上場した背景やサービスの強み、今後の事業展開について話を聞いた。
不正検知サービスを提供
――事業概要について教えてください。
ECサイトへの短期間の大量購入や、なりすましなど不正な受注を防止するための不正検知サービス「O-PLUX(オープラックス)」は、主にEC事業者に対して約2万サイトへ提供しています。
表記の異なる同一住所や姓名を正規化処理して活用できるほか、「IP」や「cookie」による同一視判定、海外からのアクセス判定、言語設定、タイムゾーンによる外国人のなりすまし判定などの機能を持ち合わせています。
もう一つの不正検知サービス「O-MOTION(オーモーション)」は、主に不正アクセスや不正ログインを防止するための機能を備え、金融機関(インターネットバンキング・ネット証券)を対象に導入されています。
「決済コンサルティングサービス」は、後払い決済の導入を希望する決済支援企業を対象に事業を行っています。このサービスは、不正検知サービスを使ってもらうためのきっかけにしたいという狙いもあります。
「データサイエンスサービス」は、AIや統計、数理最適化の技術を使ってさまざまな分野にデータ解析やアルゴリズムの開発、提供を行っています。企業が持つデータをベースに、AIを活用したマーケティングに生かしていきます。すでにオムニチャンネルを展開するアパレル企業に利用いただいています。
中長期的には、不正検知サービスで培った知見を新しい領域で「SaaS型」のサービスとして広げていきたいという思いもあります。
――不正検知の最近の傾向について教えてください。
後払い決済で未払いなどが発生した場合、後払い決済事業者が損失を負うことになるほか、ECなど非対面取引でカードの不正利用が発生すると、基本的にEC事業者が損失を負うことになります。
ある年商70億円の総合小売業の事例では、ECにおけるクレジットカードの不正利用が月で最大1000万円がありました。導入初年度は1億円の不正利用を検知があり、約5年間の利用期間で累計約2.5億円を削減できました。
導入していなかった理由をヒアリングしてみると、当社のようなサービスの存在を知らなかったり、コストをかけて導入するまでには至らなかったという話を聞きました。
――東証マザーズに上場した狙いは?
大きな被害があっても当社のサービスを知らないという理由で導入していない事業者があると考え、もっと多くの人に不正検知サービスの認知を広げるための手段として株式を上場するという選択をしました。
2011年に創業して、不正検知サービスの業界ではナンバーワンに位置していると自負していますが、他の不正検知サービスを提供しているという理由で、当社のサービスの導入を見送る大手企業もありました。その意味で、当社への信用性を高めることも株式上場の大きな狙いです。