D2Cブランドの成功事例は?
ーー数多くのD2Cブランドを支援していますが、最近の注目すべき成功事例は?コスメのD2Cブランドを展開するDINETTEは、インフルエンサーマーケティングを駆使したD2Cの事例だと思います。代表の尾崎美紀さんは、SNSのマーケティングが本当に上手。著名なインフルエンサーを活用するというよりは、少しフォロワーが多いマイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーなどに、しっかりとブランドやプロダクトの魅力を伝え商品を使ってもらい、地道に口コミを広げています。
尾崎さん自身が影響力をお持ちですが、そこに頼っているわけではありません。「発信力」というよりは、持ち前の人当たりの良さを活かした「お願い力」を発揮し、SNSを駆使しながらも泥臭くブランドを広めています。
プロダクトに関しても「まつげ美容液」が主力商品ですが、ユーザーから欲しいアイテムをヒアリングし、要望に沿った商品を作る形でラインアップを増やしています。「SNSを使うことが当たり前」であるミレニアル世代の経営者ならではだと思います。
ーーインフルエンサーがブランドを立ち上げるケースは多いですが、「DINETTE」の違いは?確かにインフルエンサーや有名人がブランドを仕掛けるケースは増えています。中には自分の影響力を高めるためにプロダクトを展開しているブランドもあります。尾崎さんは自身の影響力だけでなく、ブランドのために他のインフルエンサーを巻き込んでいます。人が先に立つか、ブランドを立てるかの違いがあると思います。
SUPER STUDIO 共同創業者・取締役CRO 真野勉氏
ーーほかにも注目すべきD2Cの成功例はありますか?グライド・エンタープライズが販売するフェイスマスク「ルルルン」は、デジタルシフトに成功しているケースだと思います。
総合ディスカウントストアなどリアル店舗での販売が中心でしたが、コロナの感染が拡大する前からEC事業に力を入れており、EC比率を急速に伸ばしています。
もともと商品の知名度は高く、ファンは多いです。ただそれに甘んじることなく、積極的にコラボを展開し話題を集めています。「旅するルルルン」というシリーズではご当地フェイスマスクを展開しています。「沖縄ルルルン」「北海道ルルルン」といった形でその地域ならではの原料や香りを付加した商品を開発しています。
話題作りだけでなく、LINEを活用したユーザーとのコミュニケーションにも積極的です。ウェブサイトのポップアップやさまざまなマーケティングを通して、多くのLINE友だち(フォロワー)を獲得しています。友だちになったユーザーには、頻度高くクーポン情報などを発信し、商品力に加えてそのお得なコミュニケーションによって、気付くと「よく買っている」ユーザーが増えています。
ーー海外の注目のD2Cは?海外D2Cではアメリカの「Peloton(ペロトン)」に注目しています。エクササイズバイクとオンライントレーニングを組み合わせたサービスを提供しており、コロナ禍において爆発的に利用者を伸ばしています。アメリカではもともとジムに通う人が多く、コロナ禍でジムに通いづらくなり、家の中でトレーニングできるサービスに人気が集まっているようです。
自宅でトレーニングするだけなら、他にもさまざまなアイテムやサービスがありますが、「Peloton」はエクササイズバイクというアイテムとサブスクリプションで提供しているインストラクターのレッスン配信サービスを組み合わせて一つのプロダクトになっている点が魅力です。他にも自宅にいながら多くの参加者とオンラインでつながり、一緒にトレーニングに励むことができます。コロナ禍のニーズの高まりを受け、「Peloton」は積極的なキャンペーンを展開したことも利用者急増の要因となっているようです。
アメリカは家が広いからエクササイズバイクを置けるという環境の違いはあると思いますが、日本でもこのようなサービスの需要はあります。恋愛リアリティショー「バチェロレッテ」に参加していた起業家の黄皓さんが、日本向けにスマートミラーを活用したフィットネスサービスを提供しています。これは日本の住宅事情に合っており、素晴らしいサービスだなと思いました。今後も健康系のサービスやプロダクトはキーワードになっていくでしょう。