2021.02.04

【コロナ禍のバレンタインに挑戦】洋菓子大手のシュゼットHD 蟻田社長に聞く「ECモール開設、仲間と売り場開拓」

シュゼット・ホールディングス 代表取締役社長 蟻田剛毅氏


洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティエ」などを展開するシュゼット・ホールディングス(HD)は、バレンタイン商戦に向け、チョコレートのECモール「アンリ・ショコラエイド」を立ち上げた。コロナ禍でリアルの売り場が苦戦する中、同業者と手を組み、ネットの売り場を自ら開拓している。シュゼットHDの蟻田剛毅社長は、「自ら販路を作らないといけない」という危機感や、「業界のために動かねば」という思いに突き動かされ、ECモール開設に至った。


バレンタインの“買い方”が変わってきた


――コロナ禍のバレンタイン商戦はどう違う?

当社はチョコレートに関しては後発なので正確なことは申し上げられない。バレンタインは年に1度のチョコレートの祭典のような形でリアルの場で発展してきたが、今回はかなり通販で買う人が増えている。買い方が変わってきた。

お客さまのバレンタインの使い方、スタンスがどうなっていくかを注視している。限られた人にしか会えなくなっているので、親愛の情を示すために身近な人に贈ったり、ご褒美チョコとして自分のために買ったりするケースが増えている。今回のバレンタインを期に、社内でチョコレートを贈る習慣をなくそうという会社もあるのではないか。バレンタインのチョコレート市場は年々縮小していたが、コロナを機に意味合いも変わっていくと見ている。

――コロナでリアルの売り場は苦戦しているのでは?

当たり前だが、百貨店やショッピングセンターにいらっしゃる人の数が減っている。その一方、通販で購入する人は増えている。法人営業でも株主総会など会合・式典での需要は減っているが、福利厚生として会社のロゴを入れた菓子を社員に配ってチアアップ(元気付ける)するようなニーズが高まっている。へこむところがあると、出てくるところがある。菓子に求めるものがちょっとずつ変わっていると感じている。

LCC(格安航空会社)が増え、旅行者が増え、お土産といえば菓子という爆発的なブームがあった。その潮流がコロナによって自己消費の方に一気に向かっていっていると感じる。ただ、社会環境の激変はあるが、みんな菓子は使ってくださっている。変化するニーズを捉えられるかどうか、企業も変われるか変われないか、試されていると感じる。


ECモール作り、自ら売り場を確保


――バレンタインに向け、チョコレートのECモール「アンリ・ショコラエイド」を立ち上げた狙いは?

われわれは店を構え、商売をさせてもらっている、いわば装置産業だ。何かアクシデントがあると店を開けたくても開けられないことがあると痛感した。自分たちでECモールを作ったのには、「自分たちの売り場を自分たちで確保する」という思いがある。

当社はありがたいことに、お客さまが付いてくださっているブランドをいくつか持っている。ブランドの名前からサイトに訪問してくださるお客さまもいる。ただ、われわれのブランドだけで提供できる商品には限界がある。特にチョコレートのラインアップは従来から少ない。それでもバレンタインの時期にサイト流入者は増える。せっかく訪問したお客さまにチョコレートが少ないとがっかりされるよりは、「チョコレートに強い仲間に集まってもらったので、他のブランドですが楽しんでいってください」と言える方が業界のためになるし、お客さまの失望感も減らすことができる。

みんなに集まってもらうためには大義名分が必要だ。そこで「アンリ・ショコラエイド」では売り上げの一部を未来のショコラティエとなる製菓学生へ、奨学金として寄付するチャリティーも行っている。


チョコレートのECモール「アンリ・ショコラエイド」

――参加するブランドの選考基準は?

同じような考えを持っているブランドを集めるため、まずは日頃からお話させていただいていたり、取引がある会社に声をかけさせていただいた。ただ、この取り組みが新聞に取り上げられると、国内外のブランドから「参加したい」という声が上がった。今回は時間的に間に合わずに参加できなかったが、われわれの狙いは間違っていなかったと感じた。今後、環境を整えていけば、より多くのブランドに参加していただけると考えている。

――「アンリ・ショコラエイド」以外のバレンタインに向けた取り組みは?

期間限定のチョコレートブランド「アンリ・シャルパンティエ ショコラプール」を立ち上げた。当社は日本一パティシエを抱えている会社の一つであり、チョコレートも作ろうと思えば作れる。ただ、チョコレートショップとしての歴史はないので、チョコレートに特化したブランドのようにカカオにこだわってやるのは二番煎じになってしまう。新たな発想で、「新素材」「新技術」「クリエーター」など、チョコレートのプールに次々と飛び込んでいくように、チョコレート菓子の創造に挑んでいる。


開放的な「アンリ・シャルパンティエ ショコラプール」のイメージ

「プール」をテーマにしたのには他の意味もある。菓子は人を元気付ける役割もあると思っている。チョコレートのデザインに凝っており、プールサイドを表現するかのようにカクテルグラスや浮き輪などをモチーフにした商品を用意した。自粛で閉塞的なご時世だが、チョコレートを楽しむときは夏のプールサイドのような、開放的な気分になってコロナを乗り切りましょうという思いもある。


「フィナンシェがチョコレートのプールに飛び込んだ!」がコンセプトの期間限定商品

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