前回の記事(
https://netkeizai.com/articles/detail/2476)では、日本の人口動態からみてECを含む小売市場は縮小が確実であり、売上第一から「粗利第一」への経営の転換が必要不可欠であることをご説明しました。
本連載の最終回となる今回は、新型コロナウイルス危機下でもDXを効果的に推進することで客単価と売上の大幅UPや、仕入れが停止する中でも滞留在庫から売上を立てたEC事業者の事例をご紹介します。
ノーコストで客単価8%アップ
通販大手フェリシモグループが運営するファッションECサイト「haco!(ハコ)」では2020年秋、わずか1ヵ月で客単価を約8%向上させることができました。
しかも、何か特別なことをしたというわけではなく、「いま手元にある在庫の中から、客単価向上に貢献する商品を見つける」ということを繰り返した結果なのです。
どうしたのかというと、全体の平均客単価帯を向上させる客単価帯の買い物(注文)をマスと捉え、そのマス層にある注文の中でよく買われている商品の品番を特定します。そして、その品番の商品がどのような組み合わせで注文されているかを確認しました。
その結果、合わせ買いされるケースが多い商品をお客がクリックすると、「よく一緒に買われている商品はこれ」という提案ができるようになったのです。
また、期中に動いているオンシーズンものをサイト上で並べ替える時のやり方も変化したそうです。従来は売れ筋の商品を前面に押し出したうえで見せ方を工夫していました。その結果、売れ行きに鈍化の兆しがある商品や、消化が進んでいない商品の優先度が下がってしまい、放置することで不良在庫化のリスクが目の前にある状態でした。
それが、在庫分析ツールである『FULL KAITEN』を使うことで不良在庫化リスクを回避できるようになりました。なぜかというと、FULL KAITENで「この商品を放置すると不良在庫に落ちてしまうよ」というアラートが見えるようになったため、意識的にアラート商品の販促に注力するようになったからです。
これらの結果、客単価は8%上昇、売上は25%増加し、在庫は20%削減することができました(いずれも前年比)。
また、haco!では従来、わざわざ「データを見る日」を設けて手間と時間をかけてシステムから商品に関するデータを探し出していました。そこから、複雑なエクセルに計算させ、ようやくセールや合わせ買い提案に用いる商品を選ぶことができていました。
それが、FULL KAITEN導入後はクリック1つで済むようになり、アイテム選定に要する時間が大幅に短縮されたそうです。