2021.01.18

【2021年の展望「楽天市場」】楽天 野原彰人執行役員「新規・復活顧客が増加、店舗の魅力を発信」

楽天 野原彰人執行役員 コマースカンパニーCOO&ディレクター


「共通の送料無料ライン」に効果


――「楽天市場」ならではの取り組みは?

新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けた地方経済や、地方のメーカーなどを応援しようというセンチメント(市場心理)が広がった。「楽天市場」ではふるさと納税や自治体と連携したウェブ物産展を介して地方経済に貢献した。「ふっこう復袋」(行き場を失った商品を詰め合わせた福袋)は、「楽天市場」の出店店舗間で広がりを見せ、ユーザーもそれをお得に買って、各地の生産者や自治体を応援するという、「楽天市場」らしい消費が活発だった。出店店舗とユーザーの価値観のベクトルを合わせることができたと捉えており、楽天の創業以来の理念である「Empowerment(エンパワーメント)」がユーザーにも店舗にも浸透しているのだと感じている。

――「共通の送料無料ライン」の導入も流通総額の拡大に貢献したのか?

「共通の送料無料ライン」導入店舗数は全体の約85%。送料無料ラインを導入した店舗の成長率は、未導入店舗と比較すると約20ポイント増と効果が出ている。取り扱い商材の特性なども影響はするが、引き続きユーザーにとって分かりやすく、利便性の高いプラットフォームの提供を目指していきたい。

――今後、共通の「送料無料ライン」を全店舗に強制導入することはないのか?

1店舗1店舗に納得してもらって導入していただいている。ユーザーにとっては分かりやすさが重要だ。個別の店舗さんとしっかりコミュニケーションを取って、施策の意義を理解していただいた上で導入していただきたい。


透明化法には前向き


――デジタルプラットフォーム透明化法が21年に施行される見通しだが、その対応は?

日本におけるマーケットプレイスの環境作りは、われわれが先行してきたと自負している。出店店舗を守り、ユーザーを守り、われわれを守るためにルールを作ってきた歴史の中で、法令順守に努めてきた。しかしながらルールが複雑だったり、分かりにくかったりする結果、不透明感が生じてしまうこともあろう。現在、透明化法で議論されている枠組を踏まえ、われわれはプロアクティブ(前向き)に取り組んでいるところ。店舗さんとのさらなるコミュニケーションの仕組みづくりなど、今後とも不断の見直しを行っていきたい。

――投資を進めている物流の状況は?

利用店舗は確実に増えている。倉庫の稼働状況は非常に良い。商品の回転率や床面積に占める満床率は高い。「楽天市場」ではさまざまな商材を取り扱っているため、物流サービスで対応している商品のカバレッジは拡大余地がある。物流はコストもかかるし、ノウハウも必要な領域だ。われわれのような事業者が足を踏み入れるのは相当な覚悟が必要。将来のことを考え、物流にボトルネックがあるのであれば、収益を上げているうちにボトルネックを解消し、サステナブルな成長ができるようにするのは経営判断として正しい。

――UGV(自動走行ロボット)やドローンによる配送の実証実験も進めている。

横須賀で実証実験を見たが、地域の住民への説明会でも関心が高いと感じた。買い物難民が生じている地域などで、水や酒など重たい商品を運ぶ足として使用していただき、それがきっかけとなって「普通に使える」という認識が広まるのはそんなに遠くない話かもしれない。ドローンも山岳エリアや離島などで実証実験を進めている。少し先の未来では当たり前の配送手段になっている可能性はある。

――2021年の展望や課題は?

2021年は新規ユーザー、既存ユーザーそれぞれに、楽天のサービスをより深く理解していただけるよう取り組んでいきたい。店舗とは「Walk Together(ウォークトゥギャザー)」の標語のもと、コミュニケーションを図っていく。今後も継続的に、個性豊かな店舗の魅力を最大限引き出す多様性と、機能を統一することで、ユーザーの利便性を向上する統一性を成長戦略の柱に、さまざまな施策を展開していきたい。

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