2020.12.09

WWFジャパン、ECモールで象牙の取引が大幅減少 楽天で99%減、ヤフーは100%減

世界自然保護基金ジャパン(以下:WWFジャパン)は12月8日、野生生物取引監視部門であるTRAFFICにおいて行った、国内象牙市場の最新調査報告書を発表した。2017年、2018年に行なったインターネットでの象牙取引調査に続き、調査対象を広げた上でその後の動向を調査した。EC企業の自主的象牙取引禁止措置により、インターネット・プラットフォーム上での象牙販売量が大幅に減少していることなどがわかった。

TRAFFICは、オンライン象牙取引の状況把握を主な目的として、これまでにも複数回調査を実施し、EC企業に働きかけを行なってきた。今回の調査は、楽天とメルカリが、2017年に象牙取引禁止措置を先行して実施して以来2年近く経つほか、2019年11月に取引禁止措置を導入したヤフーの取り組みにより、国内の象牙取引に与えた効果と影響の分析、企業モニタリングの効果などを測ることを目的に実施したという。

調査期間は、2020年6月から7月。調査対象16プラットフォームにおいて、スナップショット(定点観測)分析、取引モニタリングを実施し、過去の調査結果と比較したほか、オークションハウスの取引動向とTRAFFICが保有する野生生物取引情報システム(以下:WiTIS)による象牙の違法取引データの分析を加えたとしている。

調査の結果、取引が可能であった時より「楽天市場」では99%以上、ヤフーショッピングでは「100%」の取引の減少を確認。また「ポンパレモール」や「au PAY マーケット」など他の5つのプラットフォームでも、2018年の調査時から62%の削減となっており、企業の自主的措置によって大きな効果を見せたといえるとした。

こうした効果の一方で、隠れ広告や出品の存在も確認された。これらは出品内容を精査に調べなければ発見が難しいものや、画像の識別が困難なものなどがあり、企業内のモニタリングの体制だけでは対処できない課題もわかったとしている。また、国内象牙市場全体の動向では、かつて象牙の取引量が最大であった「ヤフオク!」での取引禁止後、「毎日オークション」での出品数/落札数が平均180%増加したほか、全形象牙の取引量と落札製品総額の安定した推移も確認され、活発な象牙取引が継続していることがわかったという。

これまでのTRAFFICの調査でも、日本の象牙製品が中国を中心とした海外へ違法に輸出され、インターネットを含めた国内市場が密輸出の温床になっていることが明らかになっている。今回も象牙にかかわる違法取引データの分析からは、中国(香港含む)および東南アジア4カ国が関わる象牙の押収事例が2019年の間に少なくとも380件あることが判明。そのうち36件が日本から中国への密輸であり、日本から同国への流入が止まらないことが示されたとしている。

昨今では、東京都が2020年1月に象牙の取引規制を検討する「象牙取引規制に関する有識者会議」を設立。国際都市として象牙取引をグローバルな課題として捉え、都として取り組むべき課題として検討を行っている。さらにデジタル手続法の改正により、ハンコレスが促進されるなか、社会的にも象牙利用の在り方に変化の兆しがある。

こうした結果から、日本では企業による国の法規制を超えた対策が一定の効果を出し、自治体での対策が進むなか、国の対応の遅れが際立っていると言えるとの見解を示した。特に中国を中心にした日本からの違法輸出が継続していることを踏まえると、国の既存の制度は違法輸出の阻止と国内の管理が十分ではないことを示しており、ワシントン条約の決議10.10(CoP18で改正)の勧告に従い、一刻も早く具体的な措置を講じるべきだとし、同報告書では日本政府に対し、狭い例外を除く象牙の国内取引停止に向けた行動計画を策定するよう提言をまとめている。

日本政府、およびeコマース企業に向けての主な提言は以下の通りとなっている。なお、同調査の詳細および提言は、Webにて公開している。

【主な提言】

■日本政府に向けて

・狭い例外を除く象牙の国内取引停止に向けて政策の舵を切り、そのための行動計画を、東京オリンピック・パラリンピックまでに策定すること

・環境省と経済産業省については、厳格に管理された狭い例外に該当する、合法的に取引が可能な製品の範囲について早急に検討をはじめること(印材(印章)としての象牙利用を段階的に廃止することを含む)

・さらに、国内市場からの象牙製品の違法輸出を防止し・摘発するために、日本の税関および他のアジア諸国の法執行当局と効果的に協働すること

■eコマース企業に向けて

・象牙取引禁止措置を導入している企業は、企業ポリシーの遵守を徹底するためにモニタリングやユーザー/消費者への啓発を強化すること、また、依然として象牙取引を容認しているプラットフォームについては、取引禁止措置を導入すること

・eコマース企業と他のインターネット関連企業は、協力してモニタリングとポリシー遵守の強化を図ること。また、野生生物の違法取引撲滅に向けたポリシーやガイドライン策定に業界全体で連携して取り組むことや、国際的取り組み(「野生生物の不正なオンライン取引終了に向けた連合体」など)への参加についても検討すること

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