2020.12.08

【アジア越境EC専門家に聞く】「日本にとっての中国EC市場はなくなるかも」キレイコム 上田直之社長

キレイコム 上田直之社長


セールイベント「独身の日(w11)」は今年、過去最大の流通額を記録した。中国や東南アジアへの輸出・越境ECを支援するキレイコムの上田直之社長は、この結果を踏まえつつも、「遠くない将来、日本企業にとって、中国のEC市場がなくなる可能性がある」と警鐘を鳴らす。「PERFECT DIARY(完全美日記)」をはじめとした、中国のローカルブランドの存在感が高まっているからだという。上田社長に、今後のアジアEC市場の展開と、その中での同社の取り組みについて、話を聞いた。


 
――2020年の「独身の日」の振り返ってもらいたい。

アリババは、セール期間中の流通総額が7兆円を超えたと公式に発表した。実際、当社と取引がある企業の多くも、売り上げを伸ばした。美容・健康関連の商材を扱うクライアントの中には、期間中の売り上げが3億円に達したという企業もあった。

アリババの公式発表によると、「Tモールグローバル(天猫国際)」の国別の売り上げランキングでは、1位が日本、2位が米国、3位が中国だったという。これは、「コロナで海外にいけないから、ECで海外のブランドを買おう」という需要があるためだと考えている。今回の「独身の日」で顕著だったのが、C to Cプラットフォームの「タオバオ」などの店舗から、「天猫国際」の旗艦店にアクセスし、商品を購入しようとするユーザーの動きだ。中国の購入者は、これまでよりも一層、偽造品を避ける傾向が強くなっている。現地のEC企業に商品を卸すだけでなく、旗艦店をしっかりと作り込んで運営している企業は、売り上げが伸びたのではないか。

今回のイベントでは、中国の国内ブランドの成長が目立った。中国国内の技術や経済の成長・成熟してきたことの現れだと考えている。特に、化粧品やモバイル機器などではそうした様子が見てとれた。ブランド別の売り上げランキングを見ると、多くの中国ローカルブランドが上位にランクインしていた。

私の感覚では、中国の人が、商品選びにおいて大切にする基準は、まず品質、そしてその次が「自国の製品かどうか」だ。現在は、高品質な外国製品が多く売れている。ただ、中国国内のブランドが同レベルの品質を持つようになれば、中国国内のブランドから売れるようになるのではとみている。中国政府が、物流や、商品の成分に対してかける規制も引き続き厳しく、日本企業にとって不透明な部分が多い。

こうした状況を踏まえると、日本のメーカーにとって、中国EC市場というマーケットがなくなるかもしれないと感じている。5年後か10年後か、決してそう遠い未来では無い。そうした危機感を持って、越境ECに取り組むべきではないか。

 
――中国EC市場の先行きが不透明であることを踏まえたとき、海外市場への挑戦を検討している日本企業は、今後どうするべきか。

東南アジア市場に進出するのが有効だと考えている。中でも、将来性が高いと考えているのがベトナムだ。ベトナムは労働人口が若く、本業とは別に、さまざまな副業で収入を得ている人が大変多い。個人としてビジネス志向を持った人が多いという印象だ。

当社が大きく支援をしている、国内の健康食品素材のメーカーも、中国への展開と並行して、ベトナムへの進出を着々と進めている。現地のEC市場はまだ成熟しているとは言い難いが、成長途上にある国にいち早く進出することで、現地の人にブランドを認知してもらう必要があるだろう。

RECOMMEND合わせて読みたい

RELATED関連する記事

RANKING人気記事