2020.12.01

【コロナで顕在化した在庫問題!売上を増やし在庫を減らす新手法とは?】第8回「人口動態を直視すれば『売上第一』から『粗利第一』への転換は必須」


個人消費力は既に低下が始まっている


国内小売市場を支えるのは個人消費ですが、全ての年代で世帯当たりの消費額は右肩下がりになっています。

5年おきに行われる総務省の全国消費実態調査という統計があり、2014年と1999年を比較したのが次のグラフです。2人以上世帯の月間消費支出額を表しています。



消費支出とは、個人が本人と家族の生活を維持するために自由に消費する支出を指します(税金や社会保険料は「非消費支出」)。棒グラフは5歳ごとの年代別に並んでいますが、15年間で全ての年代で消費支出が減少しています。特に「45~49歳」と「40~44歳」「50~54歳」の落ち込みが最も大きく、それぞれ約62,000円(15.9%)、約46,000円(13.5%)、約55,000円(13.2%)減少しています。

しかも、この「45~49歳」と「40~44歳」は本来なら収入が増えて2024年以降の社会保障制度を支える主役となるべき世代です。ところが彼らは既に消費力が減退しているうえ、社会保障関連の支出が重くのしかかってきます。これから個人消費がさらに減退する可能性は高いといえるでしょう。


縮小市場で売上を追うと過度な価格競争に


実際に国内小売市場は既に頭打ち感がみられます。2019年の小売業販売額は145.0兆円で、2018年(144.9兆円)からほぼ横ばいでした(経済産業省の商業動態統計)。2017年は142.5兆円、2016年は139.8兆円でしたから、2018年を境にそれまでの市場拡大の潮目が明らかに変わったと言えるでしょう。

拡大市場では、売上を第一に追いかけることに意義があります。顧客の奪い合いになりにくいからです。ところが縮小市場では売上にこだわると、顧客の奪い合いによる過度な価格競争になり、資本力がある大企業しか生き残れなくなるのです。

「縮小市場で価格競争になっても、原価率を下げれば粗利は確保できる」と考える方がいらっしゃるかもしれません。ただ、これは半分は正しく、半分は間違っています。

販売力を超えて大量発注すれば、1個あたりの商品原価は下がります。しかし、売れ残った商品が棚卸資産(在庫)となって粗利を削ることになるのです。

どうしてかというと、在庫は毎年価値が下がるので、この目減り分は商品評価損(評価減)としてPLの商品原価に加算されるからです(下図)。しかも、在庫を思うように消化できなくて値引き販売が多くなると、売上高が思うように伸びません。そうすることによっても原価率は上がります。



整理すると、粗利を決めるのは原価率であり、その構成要素は商品原価と値引き、評価減の3つです。商品原価だけ下げても値引きや評価減を抑制できなければ元も子もありません。

では、粗利を第一にした経営はどのように実践すれば良いのでしょうか。そのカギは、「在庫の質」を可視化することにあります。「在庫の質」の可視化とは、SKU(品番)ごとの売れ残りリスクと売上への貢献度を数値化することを指します。これができれば、SKUごとに適切な販促を実行することで、できるだけ値引きせずに販売できるようになるばかりか、気づかぬうちに在庫リスクが悪化して評価損が発生することも抑えられるようになります。

フルカイテンは、「棚卸資産の質」を可視化するためのツールとして、クラウドサービス(SaaS)『FULL KAITEN』を開発し、小売企業などに提供しています。大手アパレルやメーカー、楽天ショップオブザイヤー受賞店舗などEC・実店舗を問わずご利用いただき、粗利増加と在庫削減の両立という価値を提供しています。

事業規模がある程度の大きさになってSKU数が多くなると、「FULL KAITEN」のようなツールは大きな助けになります。ご興味をお持ちの方は是非お問い合わせください。


【著者プロフィール】



フルカイテン株式会社 
代表取締役 瀬川直寛(セガワ・ナオヒロ)

売上増加と在庫削減の両立を実現するシステム「FULL KAITEN」を開発し、クラウドサービスとして大手小売企業や楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店舗などに提供。 EC経営者として倒産危機を3度乗り越えた経験を踏まえた理論・考え方は、多くの企業から高く評価されており、「FULL KAITEN」にも多くの問い合わせが寄せられている。

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