2020.12.01

【コロナで顕在化した在庫問題!売上を増やし在庫を減らす新手法とは?】第8回「人口動態を直視すれば『売上第一』から『粗利第一』への転換は必須」

前回の記事(https://netkeizai.com/articles/detail/2226)では、原価抑制につながるはずの大ロット発注が実は落とし穴だらけという点についてご説明しました。今回は、EC事業者が目を背けがちな人口動態と個人消費の不都合な関係についてご紹介します。


医療・介護の支出増加のインパクト


少しスケールが大きな話になりますが、皆さんは日本の人口動態について考えたことはありますか? 言うまでもなく日本は高齢化が世界一進んだ国であり、合計特殊出生率も低いですよね。

この事が小売業界に与える影響が、実は甚大なのです。2030年の日本の人口は最悪のケースで1億1652万人と推計されています。これは、2015年の1億2709万人と比較して九州全体の人口に匹敵する1057万人もの減少となります(出所:国立社会保障・人口問題研究所)。

しかも、2030年には全人口の3分の1が65歳以上の高齢者になり、個人消費を主に生み出す生産年齢人口(現役世代)は全体の58.5%まで減ってしまいます。

俗に言う「2030年問題」が小売業と密接にかかわることがお分かりいただけたかと思います。



蛇足ですが、人口動態は超長期の出生率や死亡率を基に推計されるため、非常に信頼度が高い予測と言われています。

ただし、「2030年までの9年間余りで対応すれば良い」と考えるのは危険です。その前の2024~25年が転機の年となるからです。どういうことかというと、2024年には団塊の世代(第1次ベビーブーム世代)が全員75歳以上の後期高齢者になります。すると、医療や介護などの社会保障費用(社会保障給付費)が急増するのが確実なのです。

2018年の医療・介護給付費は計49.9兆円でした。これが2025年には27%も増加して計63.3兆円となり、2040年には92.9兆円まで膨れ上がります(内閣府推計)。2019年の小売市場全体の規模が145兆円でしたから、医療・介護費用という“市場”がいかに大きいマーケットか想像できると思います。そして、医療・介護市場は私たちが支払う社会保険料と公費(税金)で賄われています。

政府は現役世代の負担増は限定的と試算していますが、それは2014~2015年頃の好景気並みの経済成長が続くとの仮定に基づいた数字です。新型コロナウイルス危機の影響もあって経済成長が止まった今、増税や社会保険料引き上げなど、現役世代の負担が重くなるのは避けられないでしょう。

そうなると、個人消費に回せる可処分所得が減ってしまうのは明らかです。

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