2019.10.17

【〈南米ルポ〉楽天が参考にした「メルカドリブレ」のリアル】第3回

南米最大級のECモール「メルカドリブレ」

第3回(最終回) 59%が「送料無料ライン」で利用頻度増


楽天が来年3月以降に実施する「送料無料ラインの統一」は、南米最大級のECモール「MercadoLibre.com(メルカドリブレ)」のサービスを参考にしたという。本紙記者として取材に奔走し、現在は南米に滞在する志田岳弥氏が、現地で「メルカドリブレ」のリアルに迫った。第3回(最終回)は「メルカドリブレ」の「送料無料ライン」戦略の展開を調査。現地ユーザーに「メルカドリブレ」の利用状況を聞いたところ、全体の59%が「送料無料ライン」によって利用頻度が増加したと答えた。



流通総額53%増加


中南米18カ国で展開しているEC モール「メルカドリブレ」は18年3月、他国で成果を収めたロイヤルティープログラム「メルカドプントス」をアルゼンチンでも開始した。

同時に、送料無料ラインも統一。18年1−3月期(純第1四半期)におけるアルゼンチンでの流通総額(GMV)は、前年同期比で53%増加した。送料無料サービスを軸とした戦略が、5四半期中で最も高い成長率につながった。

64%がサービス認識


「メルカドプントス」は、一定額以上の購入での送料を無料にするサービスを基本に、会員レベルに応じた特典を用意している。アルゼンチンにおける送料無料ラインは、1999アルゼンチンペソ(2019年9月現在のレートで換算すると3776円)としている。


「メルカドプントス」のサービスページ

アルゼンチン・ネウケン州の州都ネウケンで「メルカドリブレ」の利用者50人を取材したところ、送料無料ラインを認識している割合は全体の64%だった。そのうち59%は、送料無料によって利用頻度の増加を実感していた。



「送料無料の対象にするために、家族でまとめ買いするようになった」と購買行動の変化を話す利用者もいた。

利用率以外についても聞いた。「送料無料の対象商品を選ぶようになった」と答えたのは45%、「送料無料サービスを機に利用し始めた」が6%、「特に変化はない」は48%だった。

返金サービスも好感


「メルカドリブレ」を利用する動機としては、豊富な商品ラインアップや低価格を挙げる利用者が多かった。「ネウケンではまだ販売されていない新商品が買える」「返金サービスも利用動機の一つ。オフライン店では返金に応じてくれない場合もある」と、現地ならではの事情もあるようだ。ただ、地方都市であるネウケンでの利用頻度は「月1回未満」が最も多く、58%を占めた。現地の利用者によると、配送リードタイムは1~2週間である場合が多かった。


アルゼンチンのネウケンの市民にアンケート調査

物流制し成長継続


商品の不達を経験した利用者がいることから、配送環境に課題があることがうかがえる。2018年10月には、郵便局の労働者が2週間に及ぶストライキを起こし、「メルカドリブレ」のユーザーにも影響したとの報道があった。

最新の決算資料によると、「メルカドリブレ」の2019年4−6月期(純第2四半期)におけるGMVは前年同期比33%増の34億ドル。アルゼンチン単体でのGMVは同63%増加している。

アルゼンチンや筆者が滞在するチリでは、地方都市の開発やインフラ整備が急速に進んでいる。その発展に同調するように、配送クオリティーの向上に積極投資してきたメルカドリブレの成長戦略は、「物流を制する者がECを制す」ことを体現しているといえる。


■第1回「送料無料化で成長、流通総額は1.3兆円」

■第2回「59%が『送料無料ライン』で利用頻度増加」

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