アパレル業界においてECシフト後の顧客獲得競争が一段と激化する中、確かな支持を得て、高い顧客生涯価値(LTV)を実現しているアパレルメーカーがある。オリジナルブランド「STAMP AND DIARY」や「utilité」を展開するSTAMPS(スタンプス)だ。
一般的なECサイトのメールマガジン開封率が10〜20%にとどまるのに対し、同社のメルマガ開封率は30%台〜40%超という高い水準を誇る。中には自社ECサイトで累積88回購入したり、1回で100万円近くのお買い物をしたりするロイヤルカスタマーまで存在するという。同社がなぜこれほどまでに顧客を引き付けるのか。それは、「自分らしく心地よくいられる服」のデザインと、知ってもらう工夫にあるようだ。
「人にどう見られるか」ではなく「自分らしく心地よくいられる服」へ
STAMPSの強みは、明確なプロダクト思想にあるようだ。中心となる顧客層は、自身の生き方や価値観が確立された40~50代だ。
同社の吉川修一社長は、ファッションを「他者に見せるためのもの」から「自分らしく、心地よく過ごすためのもの」と定義した。
「例えるなら、自身の生活スタイルや価値観にあった作家の器を選ぶような感覚で服を選ぶ。量産品の食器ではなく作家ものの器を選ぶような感覚で服を選ぶ。そんな考え方を大切にしながら、目立つ装飾ではなく、上質な素材感と着心地の良さ、リラックスできるシルエットを追求している」と話す。
▲STAMPSの吉川修一社長約85%を国内製造が占める妥協のないものづくりと、作り手のストーリーに共感するコアなファン層の存在が、高い顧客単価と深いエンゲージメントを支える土台となっている。
コロナ特殊の終焉と「脱・一回限り」の顧客体験へ
創業以来、「北欧暮らしの道具店」や「ほぼ日」といったメディアECや、「中川政七商店」を中心としたセレクトショップへの卸売りを主力としていた。
しかし、2020年のコロナ禍によって実店舗の休業や卸注文の急減に直面し、急きょ自社ECの本格運用に舵を切った。
巣ごもり需要によるEC特需により一時的に売り上げは跳ね上がった。
ただその後、行動制限の解除に伴いリアル回帰が進むと、ECの売上は低下傾向に転じた。これを受け、2025年から顧客との長期的な関係性を構築するCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)施策へ重点を切り替えることとなった。
CRM重視によるリピート顧客の醸成
売上低下の局面を打開するため、2024年春にCRMツール「アクションリンク」を導入した。
従来は、買い忘れ(カゴ落ち)を進知する施策とメルマガをそれぞれ別に適用しており、配信効果を一元的に把握することが難しい状況だった。
アクションリンクの導入によって「閲覧履歴」「ランキング」「おすすめ商品(レコメンド)」「ポイント明細通知」といったパーソナライズされた自動配信シナリオを緻密に構築することが可能となった。
メルマガの配信ごとの開封率や、初回購入者とリピート購入者別の動向が可視化されたことにより、データに基づく迅速な施策を打てるようになったという。
その結果、メルマガ会員数も増加。セールに先けて会員限定のプレセールを案内するなど、頭客との継続的な接点づくりに取り組み、会員数は2倍以上に伸長してい
る。
▲EC担当部長の大平愛氏(左)コアファンとの紐付けが強化されたことにより、メルマガ開封率は平均30%以上、最高で40%超を記録した。
同社では、顧客の状況や行動データを活用しながら、一人一人に合わせたコミュニケーションを模索している。現在、新規客とリビート客の購入割合は5:5となっており、新たな願客との出会いを広げながら、既存顧客との継続的な関係を深める施策にも取り組んでいるという。
今後は、自効化ツールによる効率的なアプローチで売り上げのベースを作ると同時に、生地が生まれる背景や国内工場でのものづくり、ブランドのフィロソフィーなどを伝える「読み物コンテンツ」の配信を強化していく予定だという。
作り手の思いや職人の技術など、込められたストーリーを丁寧に伝えることで、商品そのものだけでなく、その背景にある価値やブランドの世界にも共感してもらうことを目指している。
そうした積み重ねが、ブランドへの理解や愛着を深め、長く選ばれ続ける関係につながっていくという考え方だ。
◆「アクションリンク」とは?
データによって顧客像を把握し、顧客一人一人に合わせたメッセージ配信を自動化できる、SaaS型の顧客中心CRMプラットフォーム。過去数千回のPDCAによってリピート売り上げへの効果が証明された「鉄板シナリオ」がインストールされており、ボタン一つでツール導入直後から効果的な施策が実行できる。自由度の高い施策の実行や分析を、少ない工数で行えるという特徴も備える。
https://actionlink.jp/