2020.09.22

【記者コラム】伝え方はストーリーが9割

「TENET」のテーマは”時間の逆行”

先週日曜日に、「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督の新作映画「TENET(テネット)」を見てきました。コロナがあってから、私が映画館に足を運ぶのは7カ月ぶりです。ポップコーンを食べながら見ようとわくわくしていたところ、コロナ対策で「劇場内に食べ物を持ち込むのは禁止」と言われ、少しがっかりしました。

「テネット」は“時間の逆行”をテーマにしており、そのことは公開前から予告編を見て知っていましたが、ノーラン監督自身が、ネタバレ禁止を配給会社に強く要請していることから、それ以上の情報がありませんでした。配給会社は、出せる情報に制限があることと、コロナの影響で客足が重いことで、マーケティングに大変苦労しているのではないかと推察しました。

「出せる情報」と「求められる情報」の間で苦労する、という悩みを、企業の広報の方からよく耳にします。企業の広報担当に聞くと、新サービスのプレスリリースを出す際に、メディアからは「目標数値」や「過去の実績」といった数字の開示を求められることが多いそうです。メディアとしては、具体的な数字を記事で書いた方が、読者にとって分かりやすいのです。ただ、与えられた情報でリリースを作るしかないというのが、広報担当の多くの現状です。(たとえ社内の秘密情報を知っていたとしても)外部への公表が認められた限られた情報の範囲内でコンテンツを作らざるをえない広報の仕事は、一つでも新たな情報を得ようと、取材方法に工夫を凝らし、しのぎを削る我々メディアとは、似たようで違う仕事なのだろうなと思います。

以前に取材した、元アマゾンジャパン広報の小西みさを氏は、「アマゾンで学んだ!伝え方はストーリーが9割」という本を書いています。アマゾンは、具体的な数字を公開しないことで有名ですが、そんな中、広報担当者は、顧客やメディアに興味を持ってもらうために、ストーリーを意識した情報発信を行っていたそうです。例えば、新サービスなどのプレスリリースには、サービスの詳細や実施の背景、責任者のコメントなどを盛り込むことにより、ストーリー性を持たせていたそうです。米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が、だれに何を話す時にもストーリー性を重視していたことが、脈々と受け継がれているのです。

確かに、アマゾンのプレスリリースを見ると、記事を書くために必要な情報が過不足なく掲載されていると感じることが多いです。経済紙の記者はそこから、自社だけのオリジナル情報を引き出すために取材を重ねるのですが、プレスリリースの完成度の高さには毎回、アマゾンのすごさを感じます。

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