2020.09.17

【EC社長 人生の曲がり角】大都 山田岳人社長、2代続く「問屋業の撤退」を決断

大都 山田岳人社長


工具やDIY用品のECサイト「DIY FACTORY」を運営する大都は、DIY用品EC業界のリーディングカンパニーだ。トップ企業としての地位を確固たるものとした今も、2019年12月期の売上高が、前期比12.4%増の42億4000万円となるなど、その成長が止まることはない。その大都のEC事業を立ち上げ、今日の地位まで導いたのが山田岳人社長だ。山田社長が1997年に、当時の社長の娘婿として入社したころの大都は、単なる金物の卸問屋だった。ECを立ち上げた直後は、メーカーと小売店との板挟みの中で、もがく日々だったという。「ECを本格化するために、2代続いた問屋業から撤退する決断をした時は、取引先から『アホちゃうか』と言われたこともあった。その決断があったから今の当社がある」と当時を振り返る山田社長の半生を追った。


起業マインド VS 頭打ち市場


山田氏は1997年、結婚を機に大都に入社した。結婚した相手がたまたま、大都の当時の社長の娘だったからだという。

それまで山田氏は、広告・人材採用大手のリクルートで、企業に向けて採用サービスの営業を行っていた。営業マン時代から、いつかは起業したいと考えていたという。大都の先代の社長に結婚のあいさつに行った際、先代の社長から「後継者になってほしい」とふいに言われたのだ。「人から求められて経営ができるなら、願ってもないこと」と、迷うことなく大都の後継者になることを決意したとしている。入社するまで、大都がどんな会社かすら知らなかったそうだ。

大都に入社後、山田氏は、とにかく仕事を覚えて実績を作ろうと考えた。商品知識の勉強と、金物卸の営業に奔走したという。山田氏は、通りがかりで目についた金物の小売店には、必ず飛び込み営業を行っていた。

企業の採用枠や採用方法といった“カタチのない商品”を売っていた山田氏にとって、金物や工具といった“実物”を売る営業は新鮮だった。

山田氏は、聞いたことのない工具の商品名や値段を一つずつ覚えていく中で、あることに気づいた。「卸業者の売り上げは、小売店の販売戦略に大きく左右されてしまう」ということだ。

型番商品は、小売店から「商品価格を安く設定したいから卸値も安くしてほしい」と言われると、要望を飲まざるを得ないことが多かったという。従わなければ、小売店が仕入れ先を変えてしまうからだ。当時の大都も、卸問屋のご多分に漏れず、小売店の価格戦略に翻弄され、業績が低迷していたという。

「小売店の価格競争は今後さらに激化する。このままでは、卸問屋に未来はない」――そう感じた山田氏は、大都の新たな道を模索し始めた。

そんな折、友人との情報交換の中で、「ネットでモノを売る」ビジネスがあることを知った山田氏は、金物や工具をネットで売るビジネスの可能性に気付く。「大都で仕事をする中で、ゆくゆくは小売店をやらなければだめだと考えるに至ったが、実店舗を出店する資金力はなかった。コストを掛けずに、小売店の事業を実現できるECに魅力を感じた」と話す。当時、自分のパソコンすら持っていなかったという山田社長は、ECの立ち上げを先導、入社からわずか5年後の2002年には、楽天市場への初出店を果たした。

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