2020.09.02

矢野経済研究所、2019年度の食品通販市場は3.2%増の3兆8086億円に 2020年度は4兆円を超える予測

矢野経済研究所は8月28日、2020年4月~7月に実施した国内食品通販市場に関する調査の結果を公開し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。2019年度の市場規模は、前年度比3.2%増の3兆8086億円の見込み。2020年度は、4兆円を超える見通しとし、緊急事態宣言の影響により急増した需要が定着する業態と、例年通りに戻る業態に分かれるとの見解を示した。

食品通販市場は、飲料水や米、酒類、健康食品など常備性・習慣性が高い、あるいは商品重量があるカテゴリーにおいて、潜在的ニーズが高い傾向にある。2019年度は、冷夏の影響で飲料水の需要が前年より落ち込んだことや、消費税増税に伴う支出抑制傾向など、食品通販市場にとっても厳しい市場環境だったとしている。

一方で、自然災害の多発により、備蓄意識が高まり、飲料水や保存性の高い食品の需要が顕在化し、通販でまとめ買いするニーズが顕在化した。また、年度末から新型コロナウイルス感染拡大の影響により、店頭での密集を避けるために通販で食品をまとめ買いするといった購買行動が広がったとしつつ、影響が拡大したのが緊急事態宣言が発令された4月以降だったことから、2019年度の食品通販市場は前年度並みの伸長率を見込んだとしている。2019年度における「食品通販のチャネル別市場規模構成比」の見込みは、「ショッピングサイト」が39.4%、「生協(班配+個配)」が38.4%。次いで「食品メーカーダイレクト販売(直販)」が16.7%となっている。



注目のトピックとした新型コロナウイルスの影響については、2020年1月下旬から⼀部で新型コロナウイルス感染拡大懸念が広まったものの、食品通販の需要に影響が出始めたのは学校の休校が発表された2月末以降であるとした。学校の休校やリモートワークの導入、不要不急の外出自粛などによって在宅率は上昇し、食料品の買いだめ需要が拡大。特に自宅まで配送してもらえる食品通販は需要が急増し、一部では商品欠品や出荷能力の限界から受注を制限するほどだったとした。日常使いの食料品に対する需要増加だけではなく、お取り寄せグルメ・スイーツに対する需要も増加。高価格帯のハンバーグやソーセージなどを食品通販で取り寄せて、自宅で普段より高級な食事を楽しむという需要も取り込んだ。

2020年度は、緊急事態宣言が発令された後に食品通販の需要が急増。例年、在宅率が低下する5月の時期の在宅率が高かったことで、デイリー需要にとっても、お取り寄せ需要にとっても大きなプラスとなったとしている。6月以降、緊急事態宣言の解除に伴い特需は緩和したものの、感染者数が増加傾向に転じ、第2波、第3波が懸念される中で、食品通販に対する需要は引き続き高いとみられるとし、コロナ禍をきっかけに食品通販サービスを使用した人が、利便性の高さや商品・サービスの品質の高さを実感して、一部定着する可能性もあるとしている。

また業態により、5月までの需要急増が一部定着するものと、一過性の需要急増で例年通りに戻るものに分かれるとの見方を示した。例えばショッピングサイトやネットスーパー、食品メーカーダイレクト販売(直販)のように、スポットでの購入利用が中心の業態(チャネル)については、緊急事態宣言下の需要急増は一時的な影響にとどまる見通しであるとしている。一方で、生協や自然派食品宅配のように定期購入を前提とした会員制販売サービスの業態は、緊急事態宣言が解除されたからといって、コロナ禍以前の水準に即座に戻るということは考えにくいとし、一度利便性を実感したユーザーは、自身の事情やライフスタイルに適した購買リズム・購買量をさぐりながら、withコロナ時代の中で一定数が定着していくだろうとの見解を示した。2021年度以降の国内食品通販市場は、業態によって伸長・縮小の差はありながら、また成長率は鈍化しながらも、緩やかな拡大基調が続くと予測している。

同調査における食品通販市場とは、ショッピングサイト(カタログ通販含む)、生協(班配+個配)、自然派食品宅配、ネットスーパー、食品メーカーによるダイレクト販売(直販)が対象。製品(商品)については、生鮮3品(水 産、畜産、野菜・果物)、米、飲料(ミネラルウォーターは含み、宅配水は含まない)、酒類、菓子類、健康食品、その他加工食品を対象としている。


【調査概要】
調査期間: 2020年4月~7月
調査対象: 通信販売事業者、食品関連企業、生協、食品小売事業者、食品卸等
調査方法: 同社専門研究員によるアンケート調査、電話取材、ならびに文献調査併用

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