2020.08.24

【最高の顧客体験を提供する「実感型」デジタルマーケティング】第3回「『実感型』マーケティングの成功事例②」

プラスアルファ・コンサルティング山崎雄司執行役員


大手通販・EC事業者を中心に550社以上の導入実績があるマーケティングプラットフォーム「カスタマーリングス」を手掛けるプラスアルファ・コンサルティング。同社の山崎雄司執行役員カスタマーリングス事業部 事業部長に、顧客に、より豊かな体験を提供できるという「実感型」のデジタルマーケティングについて教えてもらう企画。このほど上梓したマーケター向けの書籍「最高の顧客体験を提供する『実感型』デジタルマーケティング」(東洋経済新報社刊)をひも解きながら、前回の第2回に続き、第3回は「実感型」デジタルマーケティングで成功した企業について、2つ目の事例を教えてもらう。


シナリオ初期で顧客による「期待値」を図る


前回に続き、「実感型」デジタルマーケティングに成功した企業事例として、今回はある化粧品事業者を、施策がうまくいっている企業の事例としてお話します。いわゆる単品通販を手掛けている事業者です。

顧客がお試し品を購入したとき、商品の注文後、顧客に段階的にメールを送る「ステップメール」を行う企業がほとんどです。顧客の定着を狙いとして、購入された商品ごとにシナリオを設計し、顧客が商品を使い切ったと思われる時期に、定期購入を勧める……といったパターンが一般的な手法かと思います。

先の化粧品事業者は、シナリオ初期の段階で顧客にアンケートをとっています。このアンケートは、肌に対してどのような課題を感じているのか、商品に対してどのような期待を持っているのかなど、顧客ごとの悩みの深さを測る目的です。ここで、顧客がもしシミやシワなど肌に関する課題の解決を目的として購入していたことが分かった場合、悩みや症状の程度によって、商品の使用によって体感いただける効果が変わります。

たとえば、30日間分のお試し品をお使いの場合、程度が軽い人なら30日間の使用で効果が期待できるかもしれませんが、重い人は30日では効果が出ないかもしれません。そのことを企業側がきちんと把握しておかなければ、顧客の期待を裏切ることになってしまいます。

顧客の期待が事前に分かることで、症状の重い人には、「今回のお試しだけでは効果が感じにくかったかもしれません。ですが、継続して3カ月使ったお客さまの中には、『効果を感じた』という方もいます。お客さまのお悩みには、長く使い続けていただくことで効果を徐々に実感できると思われます」などと、お試し品を使い終わった後の購買を促すことができます。

このように、顧客と双方向のコミュニケーションができていれば、お試し品で効果を感じられなかったとしても、顧客は「裏切られた」とは思いません。

仮に自社の実店舗に、肌の悩みが重そうな印象の顧客が来店し、30日間お試し用の商品を手に取って「30日間で本当に効果が出ますか?」と聞いてきた場合、「効果が出るのでとにかく使ってください」と言うでしょうか?想像していただきたいと思います。言わないですよね。それにもかかわらず、デジタルの世界では言ってしまっている。このように顧客を理解できていない状態を「顧客実感がない」状態と考えています。

顧客のことを本当に理解していて、実感があれば、「最初の1カ月(30日間)はお試し品で安く提供できるが、効果を実感してもらうためには3カ月間は使い続けてほしい」といったセールスになるはずなのです。

例に挙げた化粧品事業者は、顧客に根差したセールスと、そうでないセールスの違いに気が付き、シナリオの初期の段階でアンケートをとるようになりました。アンケートの回答に応じて、さらに細かなシナリオ分岐をさせています。2回目の購入の引き上げ率や、LTVの向上につながっています。


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