スモールスタートから始めて、細かく軌道修正を
「実感型」デジタルマーケティングが成功している事業者ほど、まずは小規模で施策をスタートし、スピード感を持って運用しています。先のアパレル事業者も同様です。
実行した施策に対して、結果のデータをどんどん受け取ることができます。これは、企画を軌道修正するための大事なインプットになります。このように、取り組みながら軌道修正していくことを前提として考えると、大規模な施策を組んで、大掛かりなシステムを1年がかりのプロジェクトとして運用することは、すごくロスが大きいということに気が付けます。
うまくいっている事業者は、小規模なスタートアップで、運用しながら(システムを)作っていくという感じです。物事の進め方がうまいとも言えます。それが、データ統合にも当てはまるということだと思います。
例に挙げているアパレル事業者は、取り扱いブランドが多数なので、全ブランドを一気にてこ入れするのではなく、データを生かした取り組みに積極的なブランドから行っていました。逆に、ハイブランドなカテゴリーを扱っているブランドでは実施しないという判断もしていました。必要性を冷静に判断していた印象です。
「データを統合する」ときのよくある失敗をお話します。手段が目的化してしまい、EC、店舗、全ブランドを横断した商品情報など、あらゆるデータを扱って大規模なシステムを作ってしまうケースです。大掛かりなシステムを作って、あとは店舗側に運用を丸投げしてしまう。そうすると、資金と時間をかけて作り上げたシステムがほとんど運用されません。
そういうアプローチをした事業者は、その使いにくいシステムをどうにか使おうとするケースが少なくありません。結果的に、何年もの単位で他社よりも遅れてしまいます。
次回は、「『実感型』デジタルマーケティングの成功事例②」をお話します。
「カスタマーリングス」【著者プロフィール】
山崎雄司(やまざき・ゆうじ)氏
1981年生、東京都生まれ。日本大学経済学部卒、トランスコスモス株式会社に入社。電話やウェブによるマーケティング支援やCRMプロジェクトに従事。2011年、プラスアルファ・コンサルティングに入社。ITを駆使したデータ活用から、マーケティング現場の付加価値を向上させる各種システムの企画・推進のほか、新規事業の企画・開発や既存事業の企画推進、人材育成などを担当する。