2020.07.14

【最高の顧客体験を提供する「実感型」デジタルマーケティング】 第1回「なぜ、いま『実感マーケティング』が必要なのか」

プラスアルファ・コンサルティング 山崎雄司執行役員


多くの企業は消費者から「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」といった、心理的・感覚的な付加価値を求められている。大手通販・EC事業者を中心に、550社以上に提供しているマーケティングプラットフォーム「カスタマーリングス」を手掛けるプラスアルファ・コンサルティングは、販促の手法論だけに頼っていては、「カスタマーエクスペリエンス」を高めることは難しいと警鐘を鳴らす。事業者は「実感型」のデジタルマーケティングを駆使することで、顧客により豊かな体験を提供できると提唱する。このほど上梓したマーケター向けの書籍「最高の顧客体験を提供する『実感型』デジタルマーケティング」(東洋経済新報社刊)をひもときつつ、執筆・監修に深く関わった山崎雄司執行役員カスタマーリングス事業部 事業部長に、「『実感マーケティング』とは何か」「次世代に求められるマーケティングとは」などについて教えてもらう。


販促の手法が陳腐化?!


書籍の上梓に当たって「実感」をキーワードにしたのは、販促施策を行っている企業はいま、次のステップに進むタイミングだと考えているからです。一般的な販促施策を実施しているけれど、「一人一人の顧客を理解できていない」、ひいては「施策の効果を実感できていない」企業が多いことが理由です。それらは、顧客体験の向上を妨げる要因になっています。

いま、販促の手法やノウハウは多くの企業に浸透しています。商品購入した顧客へのステップメール配信など、定石の施策を当たり前のように実施している企業がほとんどであり、結果としてどの会社も類似の施策をしています。問題なのは、消費者から見た場合、それらの施策はその会社独自のアプローチではないことで埋もれてしまっており、差別化することが出来ないことです。

数年前に導入する企業が増えたカート放棄フォローも「(ECサイトで)かごに商品を入れたらメールが来るのだろう」と予想がつくようになってしまい、フォローメールが届いても、あまり価値を感じない人がほとんどです。本来は高付加価値であるはずの施策が一般化してしまい、コモディティー化を起こした一例といえます。

また、消費者のデジタルシフトが加速していく中で、顧客情報が大量にデータ化されたことで、一人一人の顧客のバックグラウンドを見つめることができていない企業が多いことも、マーケティングの効果的な運用を妨げています。

データの数値からは、「この商品が1万人に購入されている」といったことが簡単に分かります。マーケティング担当者は、「その数値(1万人)を、どう増やしていくか」と、数値だけに執着してしまうケースが多く見られます。本来、購入者1万人はそれぞれ個性を持つ個客であり、購入に至る経緯や事前期待などは様々であるはずです。こうした違いを見ずに運用されている状態を、「KPI偏重」と呼んでいます。一人一人の顧客が見えなくなってしまうことで、顧客を突き動かしてしている心情や購買の動機は、数値からは分かりません。

購入に至るまでの、一人一人の嗜好(しこいう)や考え方があるのに、そこに関心を向けず数値だけを見ていては、良質な顧客体験を生み出すのは非常に難しいでしょう。そこを抜け出すには、自分たちの顧客がどんな人なのかを改めて実感する必要があります。これが私たちの提唱する「実感マーケティング」です。

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