2020.07.04

ベルシステム24、AIによるコンタクトセンター運用サービスの提供開始 ソニーコンピュータサイエンス研究所と共同で

ベルシステム24ホールディングスとソニーコンピュータサイエンス研究所は7月2日、独自開発の人工知能(AI)技術により業務効率改善に寄与する、コンタクトセンター運用に特化したサービスの提供を開始した。顧客からのメールでの問い合わせ対応業務の効率化と削減を図る。

同サービスを構成しているのは、コンタクトセンター業務での利用に特化した高精度なAI検索エンジン「Mopas(モーパス)」と、AIナレッジメンテナンス機能「Knowledge Creator(ナレッジクリエーター)」の2つの新開発AIソリューション。これらが連携することで、検索精度とナレッジのカバレッジが日々向上していくという。

「Mopas」は、クライアント企業が保有するコンタクトセンターのFAQデータのみをベースに、数十万種類のアルゴリズム・パラメーターから、正答率の高い組み合わせを採用した最適なAIモデルを数時間で自動生成するというAI検索エンジン。一般的にコンタクトセンター向け自動対応システムには、業種ごとに特定のAIアルゴリズムを使い、顧客との電話やメールやチャット等様々なデータを必要としてきた。対して「Mopas」は、投入データ量を限定しながらも、膨大かつ多様性あるアルゴリズムにより最適解を導き出すことを可能にしたという。さらに、本年4月にソニーコンピュータサイエンス研究所から共同研究所長を迎え、ベルシステム24内に設立した社内R&D組織「イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所」にて、AIの研究成果を継続的に評価・検証しており、常に最新のアルゴリズムにアップデートされたAI検索エンジンの利用が可能としている。

「Knowledge Creator」は、直感的なユーザーインターフェースに統合されたクラスタリング(類似度に基づいてデータをグループ分けする手法)や、検索キーワードのサジェスト・類似問い合わせの提示などにより、従来表計算ソフトを用いた属人的な作業であった教師データ追加作業やFAQ等のナレッジ管理・更新作業を大幅に効率化できるというAIナレッジメンテナンス機能となる。

この2つのソリューションにより、クライアント企業ごとの業種・業態に特化し、常にアップデートされた最適なカスタマーサービスを実現するAIの活用が可能になるとともに、導入並びに運用コストの抑制を実現できるとしている。同サービスは、過去一年以上の試験運用を実施しており、メーカーや通信事業者などの各クライアント企業のカスタマーサポート分野において、その有効性を確認しながら、検証とシステム改善を重ねてきたという。その結果、数社での試験運用におけるクライアント企業での導入実績として、メールの問い合わせ件数69.7%の削減や、FAQカバレッジの40%以上の向上などの成果をあげているとしている。



昨今、コンタクトセンターに寄せられる問い合わせは、電話、Eメール、チャットなど複数のコミュニケーション手段が使用され、それぞれへの対応整備は難易度を増している。その解消のため、さまざまなAI検索エンジンが運用されてきたが、搭載している特定のアルゴリズムと業種・業態ごとの相性によりパフォーマンスがばらつく、日々進化を続ける最先端のアルゴリズムへの対応ができない、データのメンテナンスやナレッジのアップデートに多くの人的コストが発生するなどの課題を抱えていたとしている。

これらの課題を解決し、実務に沿ったカスタマーサービスの運用業務に最適なAIを開発すべく、ベルシステム24のコンタクトセンターの現場における業務フローの知見と、ソニーCSLのAI研究の知見を組み合わせ、共同で独自のAIソリューションを開発するに至ったとしている。本サービスにおいてベルシステム24は、主に顧客向け製品開発、営業活動を担い、ソニーCSLはAIのアルゴリズム開発などの機能・性能向上のための研究開発を推進するという。この取り組みを皮切りに、両社の強みやノウハウを活用して、コンタクトセンター運用における業務効率向上やコミュニケーターの負担軽減、顧客の利便性向上を目指す考えを示した。

サービス提供開始にあたり、ベルシステム24ホールディングス執行役員CIOである、イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所の松田裕弘所長は、「コンタクトセンターAIを広く普及し、多くの方にそのメリットを享受頂くためにはナレッジ管理の高度化、標準化は重要なテーマです。今回、「Mopas」の高いアルゴリズム精度に加えて、ナレッジのカバレッジを高める「Knowledge Creator」の提供によって、その第一歩を踏み出すことができました。今後も、我々「イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所」では、"ベルシステム24の現場力"と"ソニーCSLの技術力"という課題発見・実験・検証・製品化に最適な組み合わせによって、第二、第三の解決策を研究開発として進め、その成果を製品という形で提供し続けてまいります」とコメントしている。

ソニーコンピュータサイエンス研究所リサーチャー、ソニーAI COOである、イノベーション&コミュニケーションサイエンス研究所のミカエル・ シュプランガー共同研究所長は、「ユーザーと企業の直接的な接点となるコンタクトセンターは、顧客満足度とリテンション向上を左右する最前線にあります。企業がこれまで以上に積極的にユーザーを支援し、洞察を得て長期的な関係を構築できるようにするために、AIが果たす役割はますます大きくなると考えます。一方でAIは技術として進化の過程にあり、新しい成果が日々発表されています。このような状況下でAIを有効に活用するためには、データを中心に据えた好循環のイノベーションサイクルを生み出すことが必要であり、それと共に、データを多く持っていない企業でもAIを活用できることが重要です。これらを実現すべく、最先端のAIアルゴリズムを使用した業界最高クラスのパフォーマンスを提供する「Mopas™」と、必要なデータの作成・維持・更新のための具体的な道筋を提供する「Knowledge Creator™」を開発しました。今後も、これらのシステムの有用性を高める機能を追加していきます。」とコメントしている。

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