2020.06.19

【インタビュー】BookLive 淡野正社長「今期売上高30%増へ 居心地良いストアづくり追求」

淡野正社長


電子書籍ストア「BookLive!(ブックライブ)」を運営するBookLiveは、20年3月期のストアの売り上げが前期比20%増以上となった。ストア事業は5年連続の2桁成長を記録しており、2021年3月期は前期比30%増を見込む。電子書籍ならではの販促の特徴や、今後力を入れていく施策について、淡野正社長に聞いた。


コミックの伸長目立つ


−─近年、電子ストアで伸びている分野は。

伸びているのはコミック。昨今は電子コミックも紙の本も両方扱う版元が増えてきた。以前よりも、電子コミックとして出し惜しみせずに世に出すようになってきたと感じる。紙媒体よりも先に電子コミックで発売し、売れ行きが好調な作品を選出して紙で出版する「ボーンデジタル」という新たな流れもある。

TL(ティーンズラブ=成人向けの描写を含む少女漫画)やBL(ボーイズラブ=男性同士の恋愛を題材とした作品)といったジャンルは特に伸びている。紙の本が書籍業界の主体だったころ、これらのコミックは店舗の奥に配置されていることが多く、ニッチなジャンルだったが、近年は市民権を得てきた。好きなことを隠さない人も増えたと思う。

――電子コミックならではの販促の特性は。

読者が「その作品を読みたいからサイトを訪問する」というモチベーションを生むプロモーションを意識している。実店舗では、「駅ビルに店舗があるから立ち寄る」という入店動機があるが、電子にはない。まずストアに来てもらうことが大切だ。作品をオンラインで広告して顧客を引き込んでおり、SEO対策にも力を注いでいる。

広告として選ぶ作品は、「市場でウケる」ことが予想される作品。話題になった「鬼滅の刃」は分かりやすい例だ。そうではないジャンルの中でも、「どの作品を広告に選べば新規のお客さまに刺さるのか」を常に考えている。

――前期比30%増の売上高を見込む21年3月期に向けての施策は。

レコメンドの精度をさらに高めていく。作品の取り扱い数が多いので、お客さまとのマッチングが良いと購買率の向上につながる。お客さまにとっては、好きな作品を買おうとしたとき、全く異なるジャンルの作品が自分に薦められたら、購買意欲が下がってしまう。

お客さまの居心地の良さも追求する。「レコメンドの精度が高い」「作品のレビューが多くて分かりやすい」「表示スピードが速い」といった強みはリピーターの創出にもつながる。

ストアのページ作りは、パッと見てすぐにその作品のイメージが想像できるようにする。各作品がどういったジャンルなのか、一見して分かるアイコンをつけるなどとする。購入したお客さまがレビューを投稿したらポイントを付与する企画など、さまざまな形でレビューを集める施策も検討する。レビューが充実している作品は購買に結び付きやすい。

――今後成長が見込まれるジャンルは。

20代後半から30代前半をターゲットとした、レディースコミックの「こじらせ系」恋愛。いわゆる「ヤンデレ」などが該当する。広告の絵柄やコピーが、モバイル広告やネット広告との親和性が高いと考えている。ウェブ広告ではさまざまな作品をプロモーションして市場の感触を見ながら、手応えのあるものを探していく。

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